「生成AIと知的財産権」について
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。まず、新年最初の知財ニュースは、昨年から話題の「生成AIと知的財産権」についてです。
昨年末に、英国の最高裁は「AIは発明者になれない」との判決を下しました。
出典:一般社団法人共同通信社HP
近年の生成AI技術の進歩は凄まじく、従来、自然人が行っていた創作的な行為を生成AIが行うことが多くなっています。このため、発明と思われるモノをAIが生成することもあります。
今回の裁判は、AIを開発した科学者がAIを「発明者」として特許を出願したところ、英国知的財産庁が認めなかったため、訴えを起こしたものです。最高裁はAIを「発明者」として認めませんでした。記事によると、科学者の代理人は「英国特許法の不備」を指摘したようです。
確かに、「発明」を創作したのがAIであればAIを発明者にすべきと考えたい気持ちは分かります。しかし、この話は、そう単純な話ではありません。
もし日本でAIを発明者にするためには、一般法である「民法」から変えないといけないからです。民法は人(自然人や法人)だけに「権利能力(権利を帰属させる能力)」を認めています。もし、AIを発明者にするなら、AIに権利能力を認めた上で、「特許を受ける権利」を原始的に帰属させなければなりません。また、発明が職務発明に該当するならAIに「相当の利益」も与えないといけないでしょう。
この「権利能力」の議論はペット等の動物でもありますが(相続財産等の問題)、今の日本の民法では、認められていません。よって、日本でもAIを発明者とするのは難しいでしょう。
また、文化庁では、昨年から文化審議会著作権分科会法制度小委員会で、「AIと著作権」について検討しており、AI生成物が著作権を侵害するのか等の論点を検討しています。1月中旬から「パブリックコメント」を行うようなので、興味がある方は、以下のサイトを覗かれたら良いかと思います。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_05