分割出願の親出願が無効になった場合、分割出願も無効となるのか?

Q:
分割出願の親出願が新規事項追加補正を理由に無効にされました。
分割出願も無効にされ得るでしょうか。

A:
 結論は、親出願(原出願)の補正違反を理由に分割出願が無効にされることはありません。ただ、分割の遡及効が得られないことによって、新規性、進歩性がないとして無効にされることはあり得ます。

 一般に、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内ではない補正、いわゆる新規事項を追加する補正をすると、特許法第17条の2第3項違反として無効理由(第123条第1項第1号)になります。
 分割出願の場合には、その分割出願の補正が、その分割出願時の明細書等の記載範囲を超える場合に無効理由となります。しかし、親出願の補正が新規事項追加であること自体は、分割出願の無効理由にはなりません。

 しかし、分割出願の遡及効(新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。:第44条第2項)が認められるためには、次の要件が必要とされます(特許・実用新案審査基準、第 VI 部 第 1 章 第 1 節 特許出願の分割の要件)。

 (要件1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
 (要件2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
 (要件3) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。

 そこで、親出願で新規事項を追加する補正がされて、その追加した事項が分割出願に含まれている場合には、(要件2)を満足しないために遡及効が得られないことになります。その場合、分割出願の新規性、進歩性は、分割出願の現実の出願の時を基準に判断されることになります。
 したがって、もし、その分割出願の時点で親出願が公開等されている場合には新規性がないことになるため、無効理由を有することになります。

 上記のような分割出願の無効理由を回避するためには、分割出願時には、親出願の出願当初の明細書等をそっくりコピーして分割出願し、その後に、必要に応じて親出願と同じ補正や分割出願で意図する請求項の補正をするのが無難です。その補正が新規事項の追加になるかどうかは、改めて審査されるからです。

 ただし、親出願の補正について補正ができない時期(特許査定時など)に分割出願する場合、親出願の出願当初に記載されていた事項でも、補正で削除されて、分割直前の明細書等に記載されていない事項が分割出願に含まれる場合には、(要件3)を満足せず、遡及効が得られないことになります。
 そのような場合には、親出願の当初明細書等や分割直前の明細書等をよく対比して確認する必要があります。

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