特許行政年次報告書 2024年版(審判)
1.イントロダクション
「特許行政年次報告書2024年版」が、特許庁より発行された。本報告書には、2023年迄の産業財産権に関する各種統計が記載さている。今月号では、本報告書の中から、審判・異議申立ての状況について紹介する。
2.拒絶査定不服審判(特許、意匠、商標)
2023年における拒絶査定不服審判の請求件数は、特許が21,047件、意匠が327件、商標が1,107件であった。
2023年における拒絶査定不服審判の平均審理期間は、特許では12.1か月、意匠では6.7か月、商標では10.7か月であった。
特許の場合、拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書等について補正があったときは、審判官合議体による審理(審判)に先立ち、審査官による前置審査が行われる。前置審査において拒絶査定が取り消されて特許査定された件数(前置登録件数)の割合は、2023年では、約57%である。なお、前置審査において特許査定されないときは、特許庁長官に前置報告された後に、審判に移行する。特許の場合、審判段階における拒絶査定不服審判の請求成立率は高く、2023年では78%であった。
拒絶査定不服審判請求件数の推移(特許、意匠、商標)
前置審査結果の推移(特許)
拒絶査定不服審判における請求成立率の推移(特許)
3.無効審判(特許、実用新案、意匠、商標)
2023年における無効審判の請求件数は、特許が84件、実用新案が0件、意匠が10件、商標が95件であった。
無効審判については、権利をめぐる紛争の早期解決に寄与するため、優先的に審理が行われる。2023年における無効審判の平均審理期間は、特許・実用新案では13.9か月、意匠では11.9か月、商標では12.3か月であった。
無効審判請求件数の推移(特許、実用新案、意匠、商標)
4.訂正審判(特許)
2023年における特許の訂正審判の請求件数は、147件であった。
訂正審判については、侵害訴訟に関連して請求される場合が多いことから、優先的に審理が行われる。2023年における訂正審判の平均審理期間は、3.2か月であった。
訂正審判請求件数の推移
5.取消審判(商標)
2023年における商標登録取消審判の請求件数は、1,029件であった。
2023年における商標登録取消審判の平均審理期間は、7.0か月であった。
取消審判請求件数の推移(商標)
6.異議申立て(特許、商標)
2023年における異議申立て件数は、特許が1,411件、商標が304件であった。
2023年における異議申立ての平均審理期間は、特許では7.8か月、商標では9.4か月であった。
2023年において、特許異議申立てがされた1,411件のうち、特許が取消しとなった件数は136件(約10%)、特許が維持された件数は1,220件(約86%)であった。
異議申立件数の推移(特許、商標)
7.Takeaway
特許異議申立ての件数が、2020年後、増加している。これは、近年、特許査定の件数及び割合がやや増加傾向にあることから、特許査定に異議のある競合他社又は第三者も増加していることが、一因になっていると予想される。特許査定が確定しても、異議申立てにより特許の全部又は一部が取り消される可能性があるので、特許査定後もクレームを訂正しやすいように、特許出願人は、従属クレームを豊富に記載しておくことが重要である。
(出典)
https://www.https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/index/all.pdf