EPC特許制度の概要
- 保護対象
- 先願主義
- 出願言語
- 料金
- 分割出願
- 優先権主張出願
- 出願から審査までの手続概要
- 補正
- 出願公開制度
- 出願審査請求制度
- 特許要件:産業上の利用性
- 特許要件:新規性
- 特許要件:進歩性
- 審判制度
- 特許権の存続期間
- 異義申立制度
- 欧州特許権の効力及び特許無効審判制度
- 早期に権利を受けるための制度
保護対象
保護対象としての発明についての定義はないが、発明でないものとして下記が列挙されている(52条(2))。
・発見、科学理論、数学的方法
・美的創作物
・精神活動、遊戯、ビジネスを実施するための計画、規則、及び方法、並びにコンピュータプログラム
・情報の提示
先願主義
2人以上の者が互いに独立して同一の発明をした場合、欧州特許を受ける権利は、最先の出願日を有するEPC出願をした者に属する。但し、最先の出願が公開されている場合に限る(60条(2))。
出願言語
英語、ドイツ語、又はフランス語(14条)
ただし、出願書類はいずれの言語でも受理される。出願言語以外の言語で出願した場合、出願日から2ヶ月以内にいずれかの出願言語の翻訳文を提出しなければならない。
料金(*最新の料金についてはEPCのウェブサイト等でご確認ください)
1.出願料
電子出願 120ユーロ(紙出願 210ユーロ)
超過頁加算(36頁~) 15ユーロ/ページ
クレーム加算(16~50個) 235ユーロ/クレーム
クレーム加算(51個~) 580ユーロ/クレーム
2.調査料
1285ユーロ
3.指定料
580ユーロ
4.審査請求料
1620ユーロ
5.特許付与(35頁まで)
915ユーロ
超過頁加算(36頁~)15ユーロ/ページ
6.年金
3年度 465ユーロ
4年度 580ユーロ
5年度 810ユーロ
6年度 1040ユーロ
7年度 1155ユーロ
8年度 1265ユーロ
9年度 1380ユーロ
10年度以降 1560ユーロ/年
分割出願
EPC出願がEPOに係属している限り、分割出願をすることができる(76条 規則36(1))。
優先権主張出願
EPC出願、及び外国出願を基礎として優先権主張出願をすることができる(88条)。
出願から審査までの手続の概要
・パリルートでのEPC出願
・PCTルートでのEPC出願(国際調査機関がJPO)
・PCTルートでのEPC出願(国際調査機関がEPO)
のいずれかにより、出願から審査までの間の手続の流れが異なります。
補正
パリルートでのEPC出願の場合、欧州調査報告を受け取った後、及び審査官から最初の通知(First Examination report)を受け取った後、指定された期間内に補正書を提出することができる。
PCTルートでのEPC出願の場合、EPO段階への移行時、補充欧州調査の作成前で、規則161(2)に基づく通知によって指定された期間内(6ヶ月)、補充欧州調査、及び審査官から最初の通知(First Examination report)を受け取った後、指定された期間内に補正書を提出することができる。
出願公開制度
EPOは、EPC出願を次の時期に速やかに公開する(93条(1))。
・出願日から又は優先権が主張されている場合は優先日から18月経過後、又は
・出願人から請求があった場合は,上記期間の満了前
公開された出願には、仮保護の権利が与えられる(ただし、仮保護の権利に関しては、各指定国で要件を定めることができる)。
出願審査請求制度
審査請求のあった出願のみが審査の対象となる(94条(1))。
審査請求ができる期間は、欧州特許公報が欧州サーチレポートの公開に言及した日から6ヶ月以内である(規則70)。
特許要件:産業上の利用性
発明は、それが農業を含む産業の何れかの分野において生産し又は使用することができる場合は、産業上の利用可能性を有するものと認められる(57条)。
特許要件:新規性
発明が技術水準の一部を構成しない場合は、新規性があるとされる絶対新規性を採用する(54条)。
自己衝突あり(54条(3))。
※新規性喪失の例外規定
発明の開示が出願前の6月以内に行われると共に、それが次の(a)又は(b)に起因するか又はその結果であり、且つ出願人が必要な手続を行った場合には、その発明の新規性の喪失が考慮されない(55条)。
・出願人又はその法律上の譲渡人に対する明らかな濫用
・出願人又はその法律上の譲渡人による特定の国際博覧会での発明の展示
特許要件:進歩性
発明が技術水準を考慮した上で当該技術の熟練者にとって自明でない場合は、進歩性を有するものと認める。
出願後に公開された書類は、進歩性の有無を判断する際に考慮されない(56条)。
審判制度
受理課、審査部、異議部、及び法律部の決定に対しては、対象となる決定の通知の日から2月以内にEPOに書面で審判を請求することができる(106条、108条)。
特許権の存続期間
欧州特許権の存続期間は、出願日から20年である(63条(1))。
異議申立制度
欧州特許公報における欧州特許付与の告示の公告から9月以内に、何人も、EPOにその特許に対する異議を申し立てることができる(99条)。
欧州特許権の効力及び特許無効審判制度
欧州特許権の効力は、EPCに特別な定めがない限り、国内特許権と同一の効力を有する(63条(2))。
欧州特許を無効とする手続は、各締約国の法律に基づいて行われる(138条(1))。
早期に権利を受けるための制度
・日-欧州特許審査ハイウェイ(PPH)が2010年1月29日より施行されている。
・PACE申請を行うことで、調査及び審査を早めることができる。