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それが前田特許事務所です。

ロシア特許制度の概要

発明の保護対象

製品または手段に関連するあらゆる分野の技術的解決手段は、発明として保護される。 (コンピュータープログラムを含む記憶装置であっても、その特徴点がコンピュータープログラムであれば、特許は認められず著作権による保護を受けることとなる)。
数学的方法、科学理論、発見、ゲームのルール、知的活動、ビジネス活動、コンピューターソフトウェア、情報のプレゼンテーションに関するアイデア、動植物の品種、集積回路の配線図、公共の利益、人道的原則、道徳に反する提案などは、保護対象とならない。

先願主義

同一発明については最先の出願人のみが特許権を取得できる。ただし、同一発明について同日に2以上の出願があった場合は協議で定めた出願人のみが特許権を取得できる。

出願ルート

以下の4ルートあり。
・ロシア特許庁への直接出願
・パリルートによる出願
・PCTルートによる出願
・ユーラシア条約に基づく出願

※ユーラシア条約に基づく出願について
欧州特許庁と同様の地域特許庁であるユーラシア特許庁に出願することで、ユーラシア特許条約加盟国(ロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、タジギスタン、トルクメニスンの計9か国)において特許権が取得できる。

※以下、ここで紹介するのは、ユーラシア条約に基づく出願を除くロシア特許庁に対する特許出願について。

 

出願言語

全ての言語による出願が可能。但し、ロシア語以外で出願を行った場合は、出願後2か月以内にロシア語の翻訳文を提出しなければならない。

出願に関する料金

単位:ロシア・ルーブル(RUB)

出願料金: 5400RUB
      25個以上の場合各クレーム当たり 810RUB
調査請求料金: 12960RUB
審査請求料金: 1の独立クレーム  8100RUB
        各独立クレーム当たり  6480RUB
延長費用: 1~6ヵ月 540RUB(1ヵ月あたり)
      7~10ヵ月 1350RUB(1ヵ月あたり)
拒絶査定不服審判請求料金: 8100RUB
特許付与手数料: 10800RUB

年金(各年度当たり):
第3年及び第4年  2700RUB
第5年及び第6年  4050RUB
第7年及び第8年  5400RUB
第9年及び第10年  8100RUB
第11年及び12年  12150RUB
第13年及び14年  16200RUB
第15年及び18年  20250RUB
第19年及び20年  27000RUB

審査の流れ

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方式審査(予備審査)

出願書類の形式的要件および簡単な実体的要件が審査される(21条(7))。不備がない場合は、方式審査の審査通過通知(審査結果、出願日等)が出願人へ通知される。
不備がある場合、出願人は指定期間(2月)以内に応答する必要があり、応答しない場合は、出願が取り下げられたものとみなされる。
指定期間は最大10月の延長可能。

出願公開制度

出願日から18月後に出願公開される(21条(6))。
審出願公開と同時にサーチレポートが発行される。(2014年10月1日施行の改正)
公報は、ロシア特許庁の電子図書館から取得可能。
出願公開されると、公開日から特許発行日までの間に、公開されたクレームに対して仮保護が与えられる(日本における補償金請求権に相当)。補償金の額は、当事者又は裁判所によって決定される。

出願審査請求制度

出願日から3年以内に審査請求する(21条(7))。第三者も請求可能。
審査請求期間は、追加費用により2ヶ月延長可能。
早期審査に関する事情説明書の提出によって、日本特許庁とロシア特許庁との間で特許審査ハイウェイを利用することができる。

新規性

・新規性調査について
出願人または第三者の請求により、特許庁が新規性の調査を行う。新規性の調査が行われた場合、出願人に調査報告書が送達される。

・新規性の判断について
出願日(又は優先日)前に、出願に係る発明がロシア国内又は外国において、公衆が利用可能な状態にある場合、新規性を有しない(絶対的新規性)。また、出願後、出願公開等された先の出願の明細書等に記載された発明と同一である後の出願は、特許を受けることができない。この場合、出願人が同一人の場合でも適用され、特許を受けることができない。

・新規性喪失の例外規定
情報開示から6月以内に出願していた場合は、発明の特許性は失われない(4条(1))。
新規性の判断について
先行技術と同一の発明は新規性を有しない。
先行技術は、公知、公用および刊行物公知により特定される(いずれも世界基準)。

 

実体審査

準拠法:行政規則及び審査基準
実体審査の手順 ①→⑤の順に行われる。
①優先日の確立
②クレームの確認
③先行技術の調査
④補足資料の要求
⑤特許性の判断

①優先日の確立
原則として出願日が優先日(先願主義)。
パリルートの場合は、第1国出願日が優先日。
補足資料が要旨変更に該当する場合は、補足資料の提出日が出願日に繰り下がる。
国内優先権制度がある(民法1381条第3項)。

②クレームの確定
クレームの要素が特定され、不特許事由、単一性が判断される。
予備審査において補足資料が提出されている場合は、補足資料を考慮してクレームが特定される。

*単一性の要件を具備しなければ、クレームの選択要求が通知される。
出願人は選択要求通知に対して2ヶ月以内に応答しなければならない。
応答しなければ、最初のクレームを含むグループが審査対象となる。
残りは分割出願で対応可能。

*単一性の要件
1つの出願には、単一の発明概念に関連する複数の発明群を含めることができる。


③先行技術調査
特許性(産業上利用可能性、新規性および進歩性)に関する先行技術調査が行われる。
先行技術調査の結果は、実体審査の開始後6ヶ月経過後に調査報告が出願人にが送付される(21条(7))。


④補足資料の要求
審査官が出願人に対して補足資料を要求する場合がある。
出願人は、要求に対して補足資料の提出ができる。この場合、要旨変更とならない範囲でクレームの補正も可能。
補足資料の提出は、要求を受理してから2ヶ月以内に行わなければならない。この期限が徒過すれば、出願が取下擬制される。
優先日に開示されていない情報を含んだ補足資料は、要旨変更となる。


⑤特許性の判断
先行技術調査の結果に基づいて特許性が判断される。
拒絶理由通知に対する応答
拒絶理由通知を受理した日から2ヶ月以内に応答しなければならない。応答しない場合は出願が取下擬制される。(最大10ヶ月まで延長可能)(21条(7)))
応答しても拒絶理由が解消しなければ、審査結果通知が出される。
審査結果通知への反論(意見書・補正書)が認められれば特許査定が発行され、認められなければ拒絶査定が発行される。

 

明細書等の補正

・補正できる時期
明細書及びクレームの自発補正は、サーチレポートの受領後、所定の期間内に1回のみできる(2014年10月1日施行の改正)。
PCT出願の場合、出願人はこれまで通り、国内段階への移行時に、さらにPCT第39条(1)(a)に基づく要件を満たした後1カ月以内にクレーム、明細書及び図面を補正できる。
拒絶理由通知が出された場合、拒絶理由通知の発行日から3カ月以内に明細書等を補正し、意見書を提出できる。 

・補正できる範囲
明細書、クレーム及び図面に記載された範囲で明細書等の補正をすることができる。
図面のみに示された特徴についてもクレームに追加することができる(2014年10月1日施行の改正前は不可だった)。
拒絶理由通知を受けた後は、拒絶理由通知に示された拒絶理由を克服するために必要な補正しか認めれられない。
なお、実体審査中にクレームを補正する際、出願人は、補正クレームにより示された新規の技術的効果が出願時に示された技術的効果と関連性がない場合には、かかる新規の技術的効果を示すことにより補正クレームの進歩性を主張することができない。

 

分割出願

特許査定または拒絶査定が発行されるまで可能。
異議申立期間内(特許査定及び拒絶査定から6ヵ月以内)は可能。

異議申立制度

特許査定以前の異議申立はできない。
特許査定および拒絶査定から6ヶ月以内に、特許紛争院(審判室)に対し、異議申立を行うことができる。異議申立は、特許権者のみならず第三者も可能。
特許査定通知に対する異議申立は、特許査定通知後、2ヶ月以内に特許査定通知の写しを要求したものに限り認められる。
ロシア内で特許査定日から4年間(実用新案は3年間)正当な理由がなく実施されなかった場合、もしくは実施が不充分な場合、発明の実施を要求する者は強制的通常実施権の付与を申請することができる。

特許料の納付時期

特許査定発行日から4か月。

特許権の存続期間

出願日/国際出願日から20年。

変更出願

特許から実用新案(出願公開前、または特許付与決定の発行前)、実用新案から特許(実用新案権付与決定まで)、及びユーラシア特許出願が拒絶された場合、6ヶ月以内に、ロシアを含む1以上の締約国の国内出願に変更が可能である。
また、ユーラシア特許出願をロシア国出願に変更することも可能である(EAPC16条)。

その他

存続期間の延長
特許の存続期間は、医薬品、殺虫剤、農薬に関しては、最大で5年まで延長できるが、期間延長は、製品に限られ、開発及び製造方法の延長はできなくなった。