台湾特許制度の概要

台湾特許制度の概要

発明の保護対象

発明とは、自然原則を用いた技術思想の創作であることをいう(特許法第21条)。
①動物、植物及び動物、植物を生産する主な生物学的な方法、ただし、微生物学の生産方法は含めない、②人類又は動物の診断、治療或いは外科手術方法、③公共秩序又は善良風俗を妨害するものは、保護対象から除外される(特許法24条)。

先願主義

同一発明については最先の出願人のみが特許権を取得できる。ただし、同一発明について同日に2以上の出願があった場合は、協議で定めた出願人のみが特許権を取得できる。

出願言語

中国語(繁体字及び簡体字)。
また、日本語、英語を含む9カ国の言語(PCT出願の公開言語と同じ;日本語、アラビア語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語)による明細書が正式に受理される(特許法第25条、2013年の法改正で言語を制限した)。
簡体字及び外国語による出願の場合、出願日から4カ月以内に繁体字の中国語翻訳文を提出する必要がある。
翻訳文の提出期間は、さらに2か月延長することができる。

出願に関する料金

2013.1.1.以降の出願に関する料金(新台湾ドル(NT$)建、1NT$=3.7円(2015年1月17日現在))
出願料: 約3500NT$
審査請求: 基本料金+追加料金(返還できる)
基本料金: 約7000NT$(明細書50頁、クレーム10項)
追加料金: 500NT$/50頁毎、800NT$/1項
*初審査の段階において、1回目の拒絶理由通知が発する前に、出願人の申し立てにより審査請求料金を返還することができる。
再審査請求: 約8000NT$

*料金は最新のものではない可能性があることにご留意ください。

出願審査請求制度

あり。優先権主張の有無にかかわらず、台湾出願日から3年以内に可能。

早期審査制度

以下の場合に加速審査(AEP)を申請できる。

・対応する外国出願が外国特許庁の実体審査を経て、特許査定されたもの。
・対応する外国出願が、米国、日本、欧州特許庁の審査意見通知書およびサーチレポートの発給を受けているが、審査結果は出ていないもの。
・ビジネスの実施上、早期の審査開始を必要とするもの。
・グリーンエネルギー技術に関するもの。

また、優先審査制度(第三者の侵害実証がある場合)あり。台湾日本PPH試行プログラムを利用できる。

新規性の判断

発明が世界中のいずれかで刊行物に掲載又は公然実施されていた場合。出願日又は優先日前に公知。

新規性喪失の例外規定

あり。
出願人による本意・不本意による全ての開示。
上記事実が発生した日から12ヶ月以内に出願したものは新規性喪失とならない。

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
各請求項は、明確かつ簡潔な方式で記載し、かつ、明細書により裏づけられなければならない(特許法第26条)。請求項は明細書及び図面により支持されなければならない。
クレームの形式では、マルチクレームは認められているが、マルチのマルチクレームは認められない(台湾特許法施行規則第18条第5項)。

・明細書の記載要件
明細書は、形式上、発明の名称、技術分野、先行技術、発明の内容、図面の簡単な説明、実施方法、符号の説明等を明記しなければならず、当業者がその内容を理解し、それに基づいて実施できるように明確かつ十分に開示されなければならない(特許法第26条第1項)。

 

発明の単一性の要件

2以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願を提出することができる(特許法第33条)。
広義の発明概念に属するものとは、2つ以上の発明であって技術的に相互に関連するものを指す。技術的に相互に関連する発明は、一つ又は複数の同一又は対応する特別な技術的特徴を含まなければならない。特別な技術的特徴とは、専利を請求する発明全体が先行技術に対して貢献できる技術的特徴を指す(特許法施行細則第27条)。

補正の機会

・出願してから1回目の拒絶理由通知が発行されるまでの期間内に自発補正。
・拒絶理由通知書を受けた後でも、拒絶理由通知書に対する回答期間内。
・ファイナル拒絶理由通知を受けた後、次の条件のいずれかに合致した場合に限って自発補正をすることができる。
(a)クレームの削除
(b)特許請求範囲の減縮
(c)誤記の訂正
(d)不明瞭事項の釈明
・再審査請求日から、再審査理由書及び必要書類を補完すべき期限満了日までの期間。

拒絶理由通知に対する応答期間

拒絶理由通知送達の日の翌日から90日以内。最長3ヶ月間延長可能(延長は1回に限る)。

補正の制限

内容:原出願時のクレーム、明細書、図面の範囲内。
ファイナル拒絶理由通知受領後、下記の事情で補正可能。
(a)クレームの削除
(b)特許請求範囲の減縮
(c)誤記の訂正
(d)不明瞭事項の釈明

出願公開制度

あり。出願日(優先権主張出願の場合は優先日)から18ヶ月後に公開。これに伴い、補償金請求権を導入。

分割出願の可能時期

・特許査定又は拒絶査定が出されるまでに
・初審査の段階で特許査定を受けてから30日以内

加盟している条約

台湾は、パリ条約及びPCTには加盟していない。しかし、WTO協定、TRIPs協定に加盟している。

優先権主張出願

上記のように台湾はパリ条約及びPCTの加盟国ではないが、1996年2月1日以降相互主義により日本・台湾間の出願にパリ条約に基づく優先権主張可能。
2002年1月1日WTO加盟。これによりTRIPs協定による優先権主張可能。
国内優先権主張出願制度あり。
*優先権証明書の提出: 優先日から16ヶ月以内

変更出願

特許出願を実用新案、意匠への出願変更可能
実用新案を特許出願、意匠への出願変更可能

拒絶査定不服審判制度

あり(再審査の請求又は訴願の提起)。
再審査請求の期限: 初審査で拒絶査定がなされた場合、出願人は査定書の送達日から60日以内に再審査を請求する。再審査の結果、拒絶の理由が解消されない場合には拒絶査定(日本の拒絶査定に相当)がなされる。
訴願: 拒絶査定に不服する場合、拒絶査定書の送達日から30日以内に訴願理由及び関連資料をもって、訴願審議委員会へ訴願を提起することができる。

特許料納付時期

特許査定通知後3ヶ月以内に登録料及び初年度分の年金を納付。

特許権存続期間

出願日から20年間。医薬品もしくは農薬又はその製造方法に関する特許の期間延長あり(最大5年間)。
延長請求前提の削除: 許可証を取得する時間が2年以上であることを前提としているが、法改正でそれを削除。

異議申立制度

なし。

無効審判制度

あり。
特許請求の範囲の部分無効請求もできる。
無効審判請求書には、必ず「無効審判声明」つまり無効審判の対象(請求項の全て又は一部)を明記しなければならない。無効審判声明に対して追加や変更が禁止。ただし、声明した請求項からの削除が承認される。

特許権成立後の訂正(付与特許の補正)

クレームの範囲を限定するためもしくは誤りの陳述を訂正するため、又は曖昧な陳述を明確にするために限る。訂正は当初提出の明細書又は図面の開示から逸脱することができず、また公告されたクレームの範囲を実質的に拡張又は変更することができない。
誤訳の訂正もできる。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案制度あり。日本と同様に形式審査のみで実体審査はない。

その他

冒認出願で無効になった場合、真の出願資格者が無効確定日の翌日から60日以内に特許出願をしたら出願日は原特許出願の日。