香港特許制度の概要

香港特許制度の概要

特許の種類

香港特許法で付与される特許は、標準特許と短期特許とがある。

・標準特許
香港特許庁に直接出願するものではなく、指定特許庁で付与された特許出願(指定特許出願)に基づいて付与される特許をいう。指定特許庁は、中国特許庁、英国を指定した欧州特許出願に関しての欧州特許庁、英国特許庁をいう。

・短期特許
香港特許庁に直接出願し、新規性等の審査は行われず、方式的要件についてのみ審査され、付与される特許をいう(日本の実用新案に相当する)。 

発明の保護対象

産業上利用性を備え、新規性・進歩性を備えた発明(93条)。
(1)発見、科学的理論、または数学的方法、(2)美的創造物、(3)精神的活動、遊戯またはビジネスを行うための計画、ルールもしくは方法、またはコンピュータプログラムは、保護対象から除外されている。

出願言語

標準特許出願は、香港の公用語(英語又は中国語)でしなければならない。

標準特許出願の出願から特許権消滅までの流れ

指定特許庁に出願した指定特許出願の公開の日から6月以内に、香港特許庁に記録請求手続(第1段階手続)を行う。その後、指定特許出願の実体審査が終了し、指定特許出願の登録の公表があった日から6月以内に、香港特許庁に登録付与請求手続(第2回段階他続)を行う(下図参照)。

 

img HongKong 04

 

出願に関する料金

・標準特許の場合
第1段階手続の登録請求料金: 448(香港ドル)
第2段階手続の登録請求料金: 448(香港ドル)

・短期特許の場合
出願料金: 755(香港ドル)

出願審査請求制度

香港特許法では、出願審査請求制度を採用していない。

早期審査制度

なし。

新規性

発明は、技術水準の一部を構成しないとき、新規性があるとされる(94条1項)。
技術水準とは、標準特許出願の出願日(優先権を主張する場合は優先日)において、書面、口頭による説明、使用またはその他のあらゆる方法によって、香港内に限らず世界のいかなる場所において、公衆に利用可能となったすべてものをいう(94条2項)。

進歩性

発明が、技術水準を考慮して、当業者に自明でない場合は、進歩性を有するものとされる(94条3項)。

先後願

技術水準の一部を構成しないとき、新規性があるとされるが(94条1項)、この技術水準は、以下のものを含んでおり、先後願の処理がなされる。

・出願日または優先日以前に出願された標準特許出願であって、出願日または優先日の後に公開されたもの
・出願日または優先日が早い指定特許庁に出願された指定特許出願であって、出願日または優先日の後に指定特許庁により公開されたもの
・出願日または優先日以前に出願された短期特許出願であって、出願日または優先日の後に公開されたもの

 

新規性喪失の例外規定

発明の開示が以下に該当する場合、その開示が出願日から6月以内であれば、新規性の審査に考慮されない(95条1項)。

・出願人またはその時点における発明の権利者に対する明らかな悪用である場合
・出願人またはその時点における発明の権利者が、所定の博覧会または会合に発明を展示した場合
・博覧会または会合への展示に関して、指定特許出願の出願時に、新規性喪失の例外に関する指定特許庁の法律に従い、展示の事実を陳述した場合

補正の機会

標準特許出願は、原則として、標準特許が付与されるまでは、いつでも自発的にすることができる。
ただし、出願が公開されており、かつその補正が対応する指定特許出願に対して行われた補正である場合に限られる。また、補正は、標準特許が付与される際の明細書の公告の準備が完了した後には認められない(36条)。

補正の範囲

補正は、新規事項を追加するものには認められない。すなわち、提出された出願に開示された事項を越える部分については無効となる(103条)

出願公開制度

記録請求が提出され、方式審査で記録請求に不備がないとされたときは、速やかに記録請求が公開される(20条1項)。
記録請求の公開は、次の事項を公表することにより行う(20条3項)。

・記録請求に添付された、指定特許出願の公開された明細書、クレーム、図面、サーチレポート、及び要約
・権利者または発明者の氏名

分割出願

標準特許出願の出願人は、指定特許出願を分割したときは、その分割指定特許出願の公開日または記録請求の公開日のいずれか遅い方から6月以内に、その分割指定出願を登録原簿に記録することを請求することができる(22条1項)。
分割指定出願の記録請求は、次の要件を満たすことが必要である(22条1項)。

・親出願の記録請求が公開されており、かつ拒絶等されていないこと
・対応指定出願(親出願)の出願人が、指定特許庁において、分割出願(分割対応指定特許出願)をし、それが同一の主題に係るものであって、対応指定特許出願の内容を越えず、対応指定特許出願の出願日を出願日として有し、対応指摘特許出願と同一の優先権の利益を有すること(22条2項)。

優先権主張

パリ条約に基づく優先件主張出願、PCTに基づく優先件主張出願が認められる。香港特許法では、国内優先権制度はない。

特許料の納付期限

指定特許出願日から3年経過後で、標準特許付与後に納付する必要がある。

特許権の存続期間

・標準特許:指定特許出願の出願日から20年。
・短期特許:原則、出願日から4年。ただし、1回に限り4年間の延長が可能。

拒絶査定不服審判制度

香港特許法では、実体審査が実質的に行われないため、拒絶査定、及びそれに対する不服審判制度はない。

異議申立制度

香港特許法では、異議申立ては認められていないが、指定特許庁における異議申し立てまたは取消手続により特許が取り消されることがあり得る。

無効審判制度

第三者による標準特許の取り消しの請求が認められる(44条4項)。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案に対応する「短期特許」が存在する。実体審査はないが、出願時に中国、イギリス、欧州のいずれかの特許庁、又はPCTの国際調査期間によって発行された調査報告書を提出要。