マレーシア特許制度の概要

マレーシア特許制度の概要

発明の保護対象

発明とは、技術分野における特定の課題の解決を実際に行わせる発明者の思想をいい、発明は、物又は方法に関するものでなければならない(特許法12条)。
また、(1)発見、科学的理論、数学的方法、(2)植物又は動物品種やその生物学的生産方法、(3)ビジネス、純精神的活動又はゲームを行うための計画、規則又は方法、(4)人又は動物の治療方法及び診断方法は、保護対象から除外されている。

先願主義

同一発明については最先の出願人のみが特許を受けることができる。2以上の者が別々に同一発明について同日に2以上の出願をしたときは、各出願は特許を受けられる。

出願言語

英語またはマレーシア語。

出願に関する料金

マレーシア・リンギ(MYR), 電子的手続を行うと料金が割引。
出願料: 290MYR(260MYR)
実体審査請求料: 1100MYR(950MYR)
修正実体審査請求料: 640MYR(600MYR)
クレーム数が10を超えた場合、20MYR/クレームの追加料金が必要 

*料金は最新のものではない可能性があることにご留意ください。

 

出願審査請求制度

実体審査請求と修正実体審査請求を選択できる。共に出願日から18ヶ月以内(但し5年まで延長可能)。

・実体審査請求
マレーシア特許庁が独自に審査を行う。

・修正実体審査請求
US,UK,AU,EPO,JP,KRで特許が付与された場合、特許文献を提出して審査請求をすることにより、マレーシア国内の審査を経ずに特許を得ることができる。

 

早期審査制度

早期審査制度あり(規則27E)。早期審査を請求するには出願公開されている必要あり。
日本特許庁により認証された日本語特許公報及びその英訳、翻訳者及び出願人による宣言書を提出して修正実体審査(MSE)を請求することで、早期権利化を図ることができる。
PPH MOTTAINAI、PCT-PPHを利用可能。ASEAN特許審査協力(ASPEC)を利用可能。

新規性喪失の例外規定

以下の行為によって新規性は損なわれない。
出願日前1年以内に生じた、出願人もしくは承継人の行為に起因する開示。
出願日前1年以内に生じた、出願人もしくは承継人の権利濫用に起因する開示。
マレーシア特許法施行日において係属中のイギリス特許庁に対する特許登録出願による開示。

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
クレームは発明を明確且つ簡潔に記載しなければならず、発明の詳細によって完全に裏付けられていなければならない(規則13)。
先行技術を区分した2パートフォームとする(規則14)。
マルチのマルチクレームは認められる。 

・明細書の記載要件
明細書は、理解可能な用語で、かつ、その技術分野における通常の知識を有する者がその発明を評価及び実施できることができるように、十分に、明確かつ完全に発明を開示し、背景技術との関係における発明の有利な効果を説明する(規則12)。

 

発明の単一性の要件

出願は、1つの発明、または相互に連関する、1つの一般的発明概念に含まれる一群の発明についてしなければならない(特許法第26条)。

補正の機会

審査報告書に対して3ヶ月以内に補正書または意見書を提出できる(期間延長可能)。

補正の制限

出願時の開示範囲を超える補正は認められない。

出願公開制度

出願日から18ヶ月後に公開される。

分割出願の可能時期

特許出願人は、自発的に又は発明の単一性に関する拒絶理由に基づいて、1またはそれ以上の分割出願をすることができる。
分割出願には、親出願の出願日が与えられる。

加盟している条約

パリ条約、PCT、Trips協定

優先権主張出願

パリ条約に基づく優先権主張出願(パリルート/PCTルート)が認められている。
マレーシア特許庁は隔週土曜日の午前中も開庁しているため、優先期間の最終日がその土曜日となる場合、優先権を主張する出願は土曜日に行わなければならない。

新規性の判断

絶対新規性が要求される。つまり、国内外において公知でないこと、公用でないこと、及び刊行物に記載されていないことが要求される。

変更出願

特許出願は、実用新案証出願に変更することができ、実用新案証出願は、特許出願に変更することができる(特許法第17条B)。

特許付与

審査結果が肯定的であれば、手数料を支払うことによって特許が付与される。
また、審査結果が否定的である場合、高等法院に不服申立を行うことができる。

特許料の納付時期

年金は、特許付与後2年目以降、各年について前払いで行う。
猶予期間(6ヶ月)と追徴金(100%)が定められている。

特許権の存続期間

出願日から20年。

異議申立制度

異議申し立ては規定されていないが、付与特許に対しては存続期間中いつでも無効を請求することができる。

無効審判制度

付与特許に対して被害を受けた者は、高等法院に無効手続を提起することができる。
無効理由は、新規性や特許性欠如、明細書や図面の記載要件が満たされていない、など。

特許成立後の訂正

特許成立後においても、一定の条件の下で明細書やそれに係る書類を補正できる。

小特許/実用新案制度

実用新案制度あり。新規性、クレームの明確性については実体審査されるが、進歩性要件は実用新案では必要とされていない(特許法第17条、第15条)。