ベトナム特許制度の概要

ベトナム特許制度の概要

発明の保護対象

・発見、科学理論、数学的方法
・精神的な行為、家畜の調教、遊戯または業務の遂行のための計画、法則および方法、並びにコンピュータ・プログラム
・情報の提示
・美的創造物
・植物品種、動物品種
・微生物的方法以外の植物および動物の生産のための本質的に生物学的な方法
・人体または動物のための病気予防法、診断方法、治療方法
また、その公開または利用が「社会道徳、公の秩序に反し、国防、治安を害する」発明も保護対象から除外される。

先願主義

同一発明については優先日を含め最先の出願人のみが特許権を取得できる。
ただし、同一発明について同日に2以上の出願があった場合は、国家知的財産権庁は共同出願を要請し、共同出願に同意しない場合は、全ての出願が拒絶される。

出願言語

ベトナム語

出願に関する料金

出願/PCT出願の国内移行出願基本料: 1出願毎に150,000VND(約6.82USD)
方式審査費用(出願料に相当): 1独立クレーム毎に180,000VND(約8.18USD)
明細書の審査費用: 明細書が6ページを超える場合、1ページ毎に 40,000VND(約1.82USD)
明細書の公開費用: 明細書が6ページを超える場合、1ページ毎に 10,000VND(約0.45USD)

 *料金や換算レートは最新ではない可能性があることにご留意ください

 

出願審査請求制度

あり(方式審査あり)。
出願日又は優先日から42ヶ月以内に可能。

早期審査制度

あり。
早期審査制度は存在するが、現在は申請してもほぼ認められない。外国ファミリー出願の審査結果を提出し、クレームを当該外国出願でのクレームと揃えることにより、審査を促進できる可能性がある。ASEAN特許協力(ASPEC)プログラムを利用することも可能。
2016年4月1日から日本との間で特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムが開始されたが、2017年3月の時点ではベトナム特許庁へのPPH申請が一旦停止されている。

新規性喪失の例外規定

あり。
以下に該当する場合であって、公表日から6ヶ月以内に出願をした場合、
・発明が、出願の権利を有する者の意に反して他人により公表された場合。
・発明が、出願の権利を有する者により、学術発表の形式で公開された場合。
・発明が、出願の権利を有する者により、ベトナムの国内博覧会又は公式若しくは公式とみなされる国際博覧会において展示された場合。

補正の制限、機会

保護証書の付与又は拒絶通知の決定を行うまで可能(知財法115条(1)(a))。補正の範囲は、出願書類に開示され又は明記された主題の範囲を拡張してはならず、出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならない。

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
クレームは、保護される発明の範囲を定める。クレームは明細書によって裏付けられていなければならない(特許法第102条)
マルチのマルチは認められる。

 

・明細書の記載要件
明細書の発明の説明では、その発明の本質を十分かつ明確に開示し、その分野における当業者がその発明を不当な実験をすることなしに実施できるように開示する(特許法第102条)

 

発明の単一性の要件

1つの発明または一体で単一の発明概念を構成する程度まで密接に関連する一群の発明のみに関する。

拒絶理由通知に対する応答期間

出願後に方式審査がされ、方式要件を満たさない場合、受理拒絶の予定が出願人に通知される。この通知に対する応答期間は1カ月である。

審査請求後、実体審査の期間満了に先立ち、拒絶理由がある場合は、拒絶理由通知から2ヶ月以内に応答する(ただし、2ヶ月の延長が1回のみ可能)。

出願人が自主的に又は国家知的財産権庁の要求により、明細書を補正する場合、実体審査の期限は補正する期間だけ延長することができる。
なお、実体審査は、審査請求日から12カ月以内又は出願公開日から12カ月のいずれか遅い日までに完了すべき、と規定されている。

 

出願公開制度

あり。
出願日又は優先日から19ヶ月後に公開。権利発行後に、出願公開から特許付与までの間に受けた実施料相当額の補償金を請求可能。
PCT出願の場合は、国内移行日から2月後に出願公開される。

分割出願の可能時期

特許査定の前、すなわち実体審査期間中であれば可能。また、出願が発明の単一性を満たしていないとして審査官から分割を要求された場合、その要求から2月以内に分割出願できる。

加盟している条約

パリ条約、PCT、Trips協定

優先権主張出願について

パリ条約に基づく優先権主張可能。
(注:パリ条約は1949年、PCTは1993年、WTOは2007年にそれぞれ加盟。)

変更出願

実体審査期間中であれば、特許出願と実用新案登録出願との間での変更が可能。
実体審査で拒絶された場合、拒絶通知日から3ヶ月以内に特許出願を実用新案登録出願に変更可能。

新規性の判断

発明が、出願日又は優先日前に、世界中のいずれかで、平均的な当業者が発明を実行することができる程度にまで、使用又は情報源(印刷物、画図、磁気テープ等の各種記録媒体、講演、展示等)での説明によって公衆に開示されていないこと。

不服の申立

出願が拒絶された場合、90日以内に国家知的財産権庁に不服を申し立てることができる(期間延長なし)。

特許料の納付時期

特許査定の発行日から1月以内。

特許権の存続期間

出願日から20年間(期間延長なし)。

異議申立制度

なし。
登録前の出願に対して情報提供制度があるのみ。

無効審判制度

特許権利期間中に特許の取り消しを国家知的財産権庁に請求することができる。

特許権成立後の訂正請求

特許権者は、特許請求の範囲の減縮を請求することができる。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案制度あり。存続期間は出願日から10年間。
実体審査あり(審査請求制度もあり)。新規性、産業上の適用可能性、周知性が満たされないこと、の要件が審査される。

その他

先使用権あり。ただし、先使用権は譲渡不可。
PCT出願の国内移行手続きの期限は、優先日から31ヶ月。ただし、31ヶ月を経過した後であっても、6ヶ月以内であれば割増料金の支払いを条件に国内移行手続きが可能。