ブラジル特許制度の概要

ブラジル特許制度の概要

発明の保護対象

発明の定義は、法律(産業財産権法)で規定されていない。ただし、次に掲げる事項は、発明又は実用新案とみなされない(ブラジル産業財産法第10条)。 

・発見,科学の理論および数学の方法
・純粋に抽象的な概念
・商業、会計、金融、教育、広告、くじおよび抽出の手段、計画、原理または方法
・文学、建築、美術および科学の著作物、または審美的創作物
・コンピュータ・プログラムそれ自体
・情報の提供
・遊戯の規則
・人体または動物に適用する外科的技術および方法、並びに治療または診断の方法、および
・全ての自然の生物のゲノム又は生殖質を含めて、それらから分離されたものであるか否かに拘らず、自然の生物及び生物材料の全部または一部、並びに自然の生物学的方法

 

先願主義

同一発明については最先の出願人のみが特許権を取得できる。

出願言語

ポルトガル語のみ。

出願に関する料金(2014年施行)

出願料金: 175レアル(電子出願) 260レアル(紙出願)
実体審査請求料金: 590レアル(基本料金;10クレームまで)
          11~15クレームまでは1クレーム当たり100レアル
          16~30クレームまでは1クレーム当たり200レアル
          31クレーム以降は1クレーム当たり500レアルを加算。
なお、個人や零細企業家等については出願料金、審査請求料金共に約60%減額。
出願維持年金: 295レアル/年(出願の第3年目から)
特許年金: 第3年~第6年 780レアル
      第7年~第10年 1,220レアル
      第11年~第15年 1,645レアル
      第16年以降   2,005レアル
特許証発行料金: 235レアル
審判請求料金: 1,420レアル

*料金は最新のものではない可能性があることにご留意ください。

 

出願審査請求制度

あり、出願日から3年以内に請求可能。PCTの場合は国際出願日から3年以内に請求可能。この期間内に審査請求しない場合、出願が却下されるが、却下されてから60日以内に出願人が回復の請求をし、所定の手数料を納付した場合には、回復可能。

早期審査制度

優先審査(決議68/2013)
以下のいずれかの条件を満たす場合に優先審査が認められる。
・申請者が以下のいずれかを証明する。
 発明者が60 歳以上である。
 第三者によって特許出願のクレームが侵害されている。
 特許の付与が金融機関やベンチャーファンドからの資金の獲得の条件である。
・第三者が出願人による特許出願のクレームの権利侵害で警告されている。

優先審査(決議80/2013)
医薬品、医薬品の製造方法、および公衆衛生に関連した装置や備品に関する特許出願について、以下の者が優先審査を申請できる。
 出願人
 関心のある第三者(特許出願がエイズ/HIV、癌の治療、またはシャーガス、デング熱、ハンセン病、マラリア、結核、ブルーリ潰瘍などの診断、予防または治療に関連する場合)
 保健省(特許出願が公共医療にとって極めて重要であると考えられている製品やプロセスをクレームしている場合)

グリーン特許試行プログラム(決議83/2013)
代替エネルギー、運輸、省エネルギー、廃棄物管理や農業などの分野における「グリーン」技術に関連する発明の出願について、審査を加速する。

新規性喪失の例外規定

あり。
以下の公表については新規性は喪失しなかったものとみなされる。

・出願前12カ月以内における発明者による発明の公表
・国家工業所有権機関(INPI)が、発明者から取得した情報に基づき、又は発明者が行った行為の結果として,発明者の同意を得ることなくなされた特許出願を公開したことによるもの
・出願前12カ月以内における発明者の意に反する行為による発明の公表
この例外規定の適用を受けるためには、出願の際にその旨の申し立てをする必要あり。更に、特許庁から指令を受けた場合には、その証拠書類を提出しなければならない。

 

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
「クレームは、明細書において具体化するものとし、出願の詳細を特徴付け、保護を求める内容を明瞭かつ正確に定義するものでなければならない。」(同法第25条、サポート要件および明確性要件)
複数クレームを引用する複数のクレームを引用すること(いわゆるマルチのマルチ)は認められる。

・明細書の記載要件
「明細書には出願の対象を、当該分野の当業者による再現が可能となる程度に明確かつ十分に記載しなければならず、該当する場合は、それを実行するための最善の方法を表示 しなければならない。」(同法第24条、実施可能要件)

*詳細は、特許審査ガイドライン「第Ⅱ章 明細書」「第Ⅲ章 クレームの範囲」で説明されている。

発明の単一性の要件

「発明特許出願は,単一の発明,又は単一の発明概念を形成するように相互に連関した一群の発明に係わるものでなければならない。」(同法第22条)

補正の機会

INPIから補正命令を受けたとき
出願審査請求の前
特許性がないことの見解書が出されてから90日以内
なお、拒絶理由通知は公報に公開されるだけで、出願人や代理人に送付されない。

補正の制限

出願書類によって最初に開示した内容を超えないこと。
INPIによる命令に従う場合を除き、出願を明確化もしくは減縮、又は明白な誤記の訂正を目的とする補正しかできない。

出願公開制度

あり。
原則として出願日から18ヶ月(優先権主張出願の場合は基礎出願日から18ヶ月)後に公開。早期公開制度あり。
なお、国防上の利害がある特許については公開されない場合あり。

分割出願の可能時期と制限

審査の終了までいつでも可能。審査の終了は、特許性に関する最終的な報告の日、又は付与の決定の公表、拒絶もしくは確定的棚上げの日のいずれか後に生じた日の30日前。
分割出願は、親出願に開示された主題を越えてはならない。

加盟している条約

本パリ条約、PCT条約、WTO協定、ブダペスト条約、ストラスブール協定文

優先権主張出願について

以下のものが可能。
・パリ条約に基づく優先権主張出願(PCTルートの出願も含む)
・国内優先権主張出願

変更出願

出願人は、審判請求期間内において、追加証明書申請を特許出願に変更できる。

新規性の判断

技術水準の一部でないこと(絶対新規性)。

拒絶査定不服審判制度

あり。
拒絶決定の日から60日以内に請求可能(出願却下後、特許査定後には審判請求不可)。

特許料の納付時期

出願許可(特許査定)後60日以内。ただし、当該期限後30日以内に特定の手数料とともに納付することもできる。特許料を納付しなければ出願却下されるが、所定の期間内に回復可能。

特許権の存続期間

出願日から20年で満了。ただし、特許の存続期間は、原則として、特許付与日から起算して10年未満であってはならない。

異議申立制度

なし。ただし、利害関係人は審査終了までの間は、「審査補助」(subsides for examination)を提出して、出願をサポートし、又は技術的意見を提出することができる。

無効審判制度

あり。行政上の無効手続は、利害関係人が特許付与から6カ月の期間内に、以下の理由についてすることができる。 

・法定要件の何れかが満たされていなかったこと
・明細書及びクレームが、同法第24条及び第25条(実施可能要件及びクレームの記載要件)の規定を満たしていなかったこと
・特許の対象が、本来の出願内容を超えていること、または
・出願処理の過程において、特許を付与するために不可欠な本質的手続の内の何れかが欠落していたこと

なお、特許の存続期間中はいつでも司法上の無効手続を裁判所に提起することができる。

 

特許権成立後の訂正

日本国の訂正審判に相当する制度はない。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案制度有り。
実用物品又はその一部で、産業上利用可能であり、その使用又は製造における機能的改良をもたらす新規の形態又は構造を有し、かつ進歩性を有するものが対象。実体審査あり。

その他

追加証明書
出願人又は特許所有者は、進歩性を欠く場合であっても,先の発明の内容に加えた改良又は進展を保護するために、特定手数料を納付して、追加証明書を申請することができる。ただし、その内容が元の内容と同一の発明概念に含まれていることを条件とする。