インド特許制度の概要

インド特許制度の概要

発明の保護対象(特許法第3条、同法第4条)

「発明」とは、進歩性があり、かつ、産業上利用可能な新規の製品又は方法をいう。以下のものは保護対象から除外されている。

・取るに足らない発明又は自然法則に反する発明
・発明の目的とした用途が公序良俗に反し、又は人、動物、植物の生命、健康又は環境に深刻な害悪を及ぼす発明
・科学原理の発見又は抽象的理論の形成、又は現存生物又は非生物物質の発見
・公知の物質の新しい性質若しくは新しい用途の単なる発見
・物質の成分の諸性質についての集合という結果になるに過ぎない混合によって得られる物質、又は当該物質の製造方法
・既知の装置の単なる配置・再配置・複製、これを構成する各装置が既知の方法によって相互に独立して機能するもの
・農業又は園芸についての方法
・人の内科的、外科的、治療的、予防的、診断的、療法的、その他の処置方法
・微生物以外の植物及び動物
・数学的若しくは営業の方法、又はコンピュータ・プログラムもしくはアルゴリズム
・文学、演劇、音楽若しくは芸術作品
・精神行為をなすための単なる計画若しくは規則若しくは方法、又はゲームをするための方法
・情報の開示
・集積回路の回路配置
・事実上、古来の知識である発明
・原子力に関連する発明

 

先願主義

先願主義が採用されている。

出願言語

英語(又はヒンディー語)

出願に関する料金

電子出願の場合
・出願料
個人又はスタートアップ企業(注):1,600ルピー(明細書が30頁を超える場合、160ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、320ルピー/クレームの追加、配列表160ルピー/頁の追加(上限24000ルピー))、複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに1,600ルピー追加料

小規模団体: 4,000ルピー(明細書が30頁を超える場合、400ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、800ルピー/クレームの追加、配列表400ルピー/頁の追加(上限60000ルピー))、複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに4,000ルピー追加料

個人、小規模団体以外: 8,000ルピー(明細書が30頁を超える場合、800ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、1,600ルピー/クレームの追加、配列表800ルピー/頁の追加(上限120000ルピー))複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに8,000ルピー追加

・審査請求料
個人又はスタートアップ企業の場合:通常4,000ルピー、国際出願5,600ルピー
小規模団体の場合:通常10,000ルピー、国際出願14,000ルピー
個人、小規模団体以外の場合(一般企業等):通常20,000ルピー、国際出願28,000ルピー

紙出願の場合
・出願料
個人又はスタートアップ企業: 1,750ルピー(明細書が30頁を超える場合、180ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、350ルピー/クレームの追加、配列表は提出不可)、複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに1,750ルピー追加

小規模団体: 4,400ルピー(明細書が30頁を超える場合、440ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、880ルピー/クレームの追加、配列表は提出不可)、複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに4,400ルピー追加

個人、小規模団体以外: 8,800ルピー(明細書が30頁を超える場合、880ルピー/頁の追加、クレームが10を超える場合、1,750ルピー/クレームの追加、配列表は提出不可)複数の優先権主張を伴う場合、優先権ごとに8,800ルピー追加

・審査請求料
個人又はスタートアップ企業の場合:通常4,400ルピー、国際出願6,150ルピー
小規模団体の場合:通常11,000ルピー、国際出願15,400ルピー
個人、小規模団体以外の場合(一般企業等):通常22,000ルピー、国際出願30,800ルピー

(注): 「スタートアップ企業」には、i)創立してから5年未満、ii)年間の売上高が2億5000万ルピー(約4億円)を越えないこと、iii)技術革新、開発、展開に向けて取り組んでいる、又は知的財産や技術を駆使した新製品、プロセス又はサービスを商品かしていること、の三要件をすべて満たす企業が該当する。

*料金は、最新のものではない可能性があることにご留意ください。

出願審査請求制度

あり。
出願日または優先日から48ヶ月以内に可能。
既に審査請求されている親出願から新たに分割出願する場合、当該分割出願の出願時に審査請求する必要がある(2016年5月16日施行の規則改正)。
期間内に審査請求をしなかった場合には、出願は取り下げられたものとみなされる。

早期審査制度

2016年5月の特許規則改正により、早期審査制度が導入された。ただし、早期審査を請求できるのは、
・インドが国際調査機関(ISA)または国際予備審査機関(IPEA)として指定されている場合
・出願人がスタートアップ企業である場合
のいずれかに限られており、日本の出願人は早期審査を請求できない。

新規性喪失の例外規定

以下の行為によって新規性は損なわれない。 

・発明の内容が特許権者、出願人、発明者または譲渡人から取得されたものであって、公表が出願人等の知らないうちに行われた場合。ただし、出願人等が公表を知った後すぐに出願を行うことを条件とする。
・発明の実体を調査するために、政府又は政府から授権された者に事前に伝達すること、及びその結果として調査目的で行われる事項。
政府により指定された博覧会における出願人による発明の最初の展示及び公表又は出願人の同意を得て行った発明の展示について、当該博覧会の開催日から12ヶ月以内に特許出願を行った場合。
・学会における発明者による発明の発表もしくはその学会等の業務として発明者の同意を得たうえで行われた発明の公表について、その発表日もしくは公表日から12ヶ月以内に特許出願を行った場合。
・優先日前1年以内に出願人等またはその同意を得た者により、発明の試験として行われた公然の実施。

 

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
クレームは、明確かつ簡潔でなければならず、また明細書に開示された事項に適切に基づかなければならない(特許法第10条(5))。 マルチのマルチは認められる。

・明細書の記載要件
発明自体、その作用または用途、その実施の方法を十分かつ詳細に記載し、出願人が保護を求める発明を実施する最良の方法を開示する(特許法10条(4))。

発明の単一性の要件

特許出願は1発明について限られる(特許法7条(1))。完全明細書のクレームは、1つの発明、又は単一の発明概念を構成するように連関した一群の発明に係るものでなければならない(特許法第10条(5))。

補正の機会

出願人の請求により、明細書等の補正をすることができる。
オフィスアクションに対する応答の際に可能。最初のオフィスアクションから12ヶ月以内(アクセプタンス期間)に出願を特許可能な状態にしなければならない。期間延長はできない。

補正の制限

出願時の開示範囲を超える補正は認められない。 また、補正は権利の部分放棄、修正若しくは説明の追加に限る。(57条)

出願公開制度

出願書類は原則として出願(優先日)から1年6ヶ月を経過した後に公開される。 所定の手数料を支払えば、出願の早期公開の請求が可能。 以下の場合は出願公開されない。
・秘密保持の指令が発せられた場合。
・仮出願明細書による出願後に完全明細書を提出しなかった場合。
 ※仮出願はクレームのないサマリー程度の簡単な明細書で行うことができ、インドでは優先日を確保するために使われている。
・出願日または優先日から15ヶ月よりも前に出願が取り下げられた場合。

分割出願の可能時期

特許出願人は、特許が付与される前いつでも、分割出願をすることができる。分割出願から分割出願をすることはできない。分割出願には、親出願の出願日が与えられる。分割出願は、親出願の完全明細書に実質的に既に開示されていない事項を一切包含してはならない。(16条)

加盟している条約

パリ条約、PCT、TRIPS協定、ブダペスト条約

優先権主張出願

パリ条約に基づく優先権主張出願可能。
*追加特許制度あり: 付与済みの特許または提出済みの特許出願(主発明)の改良・変更に関する特許が出願された場合は、その改良の特許を追加特許として付与することができる。

変更出願

なし。

新規性の判断

絶対新規性が要求される。つまり、国内外において公知でないこと、公用でないこと、及び刊行物に記載されていないことが要求される。
なお、コンピュータプログラム自体やビジネスモデル等については、新規性や進歩性の有無にかかわらず特許化できない(不特許事由)。

拒絶査定不服審判制度

拒絶査定に対して審判部に審判の請求が可能。請求の期限は拒絶通知から3ヶ月以内。

特許料の納付期限

登録料納付の手続きはない。
出願日から2年間の終了時およびその後各年の終了時に所定更新料を支払わなければならず、その年度の末日までに特許庁に送金するものとする。
所定手数料を支払い、所定様式で延長申請すれば、更新料の支払期限を最長6カ月間延長することができ、また、2年間以上の年間料金を前払いすることもできる。
更新料の未払いによって消滅した特許権については、その消滅の日から18ヶ月以内に回復を請求できる。

特許権の存続期間

出願日から20年。存続期間の延長制度はない。

異議申立制度(付与前異議)

出願公開日から特許付与日までに何人も申立可能。
上記の期間内であれば、たとえ審査中であっても申し立てできる。
異議申立があった場合は3名からなる異議部が構成される。その場合、対象となる出願を担当している審査官は異議部の構成員になることができない。

無効審判制度

付与後異議申立制度あり。申立期間は、特許公告から1年間。利害関係者のみ。

特許成立後の訂正

特許成立後においても、一定の条件の下で明細書やそれに係る書類を補正できる。

小特許/実用新案制度の有無

なし。