シンガポール特許制度の概要

シンガポール特許制度の概要

発明の保護対象

特許法において、発明の具体的な定義はなく、特許性のある発明として、新規性、進歩性及び産業上利用可能性を有するものと規定されている(13条)。また、公序良俗に反するものは特許性を有する発明と認められない。

先願主義

先願主義が採用されている。

出願言語

英語

出願に関する料金

シンガポールドル(SGD)
出願料: 160SGD
調査報告または補充調査報告請求: 1,925SGD
審査報告請求: 1,350SGD
調査及び審査報告請求: 2,600SGD

*料金は最新のものではない可能性があることにご留意ください。

出願審査請求制度

あり。
従来はスロートラックとファストトラックの2種類があったが、2014年2月14日に施行された法改正により審査請求時期が一本化された。出願審査請求は優先日又は出願日から36カ月以内にする必要があり、18カ月まで要件なしで期間延長が認められる。
ただし、審査には実体審査と補充審査とがあり、補充審査(方式審査)を望む場合は優先日又は出願日から54カ月以内に請求する。

実体審査には、シンガポール特許庁での実体審査を請求する場合と、PCTのサーチレポートや外国での調査結果を用いた実体審査を請求する場合とがある。既に調査結果があ実体審査の場合、拒絶理由があれば1回以上見解書が発行され、これに対して5カ月以内に応答(補正含む)することができる。見解書が出されてから18カ月の間に拒絶理由が解消できれば「拒絶理由のない実体審査報告書」が出され、その後適格性通知が出される。
見解書が出されてから18カ月の間に拒絶理由が解消できなければ「拒絶理由のある実体審査報告書」が出される。

補充審査の場合、拒絶理由がなければ「拒絶理由のない補充審査報告書」が出される。拒絶理由がある場合、1回のみ見解書が出され、これに対して3カ月以内に応答することができる。見解書が出されてから6カ月以内に拒絶理由が解消できない場合、「拒絶理由のある補充審査報告書」が出される。

早期審査制度

PPH MOTTAINAI、PCT-PPHが利用可能。ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラムを利用可能。

新規性喪失の例外規定

以下の行為について進歩性は阻害されない。
・出願前または優先日前12ヶ月以内の発明の開示であって、不法行為に起因して入手した発明の開示。
・国際博覧会への出展から12ヶ月以内に出願した場合。
・学会における発明者による発明の発表もしくはその学会等の業務として発明者の同意を得たうえで行われた発明の公表について、その発表日もしくは公表日から12ヶ月以内に特許出願を行った場合。

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
クレームは、出願人が保護を求める事項を定義し、明確かつ簡潔で、発明の説明によって裏付けられなければならない(特許法第25条(5)(b))。

・マルチのマルチクレームは認められている。
明細書の記載要件
明細書は、その発明の属する分野の当業者がその発明を実施することが可能なように、明確かつ十分に開示、説明しなければならない(特許法第25条(2))。

発明の単一性の要件

1または単一の発明概念を形成するよう連関する一群の発明にかかわるものでなければならない(特許法第25条(5)(d))。

補正の機会

出願人の請求により、自発的に明細書等の補正をすることができる。
オフィスアクションに対する応答の際に可能。

補正の制限

出願時の開示範囲を超える補正は認められない。

出願公開制度

出願書類は原則として出願(優先日)から18ヶ月を経過した後、できるだけ早期に公開される。
例外)
・出願人が所定の手数料を支払うことによって出願の早期公開が可能。
・以下の場合は出願公開されない。
 秘密保持の指令が発せられた場合
 公開の準備が完了する前に、出願が取り下げられた場合、放棄されたものとして扱われた場合または拒絶された場合

加盟している条約

パリ条約、PCT、Trips協定、ブダペスト条約、WTO協定

分割出願の可能時期

特許出願人は、自発的に又は発明の単一性に関する拒絶理由に基づいて、1又はそれ以上の分割出願をすることができる。分割出願には、親出願の出願日が与えられる。親出願の特許付与の条件が充足される前に行うことを要件とする。
また、拒絶通知が出された場合、その後最終拒絶が出る日まで分割出願できる(無条件に6カ月の期間延長可能)。

優先権主張出願

パリ条約に基づく優先権主張出願(パリルート/PCTルート)が認められている。
シンガポール特許庁は土曜日の午前中も開庁しているため、優先期間の最終日が土曜日となる場合、優先権を主張する出願は土曜日に行わなければならない。

新規性の判断

絶対新規性が要求される。つまり、国内外において公知でないこと、公用でないこと、及び刊行物に記載されていないことが要求される。

特許付与

従前は審査報告の見解が否定的であっても登録料を納付することにより特許が付与されていたが、2014年の改正後は拒絶理由がない場合にのみ適格性通知が出され、適格性通知から2カ月以内に特許料を納付することにより、特許権が与えられる。

特許料の納付期限

特許付与後、維持年金が必要。維持年金は、出願日の各年の対応日前3ヶ月以内に支払う。

特許権の存続期間

出願日から20年。維持年金の支払いを条件とする。
特許付与手続におけるシンガポール知的財産庁の不当な遅延等があった場合、存続期間の延長が可能。

不服申立

拒絶理由のある実体審査報告書が出された後、拒絶意向通知が出される。拒絶意向通知が出されてから2カ月以内(6カ月まで延長可)に審判請求をすることができる。

特許取消制度

利害関係人は、下記の場合、所定の手数料を支払うことにより登録官に特許取消を申請できる。

・発明が新規でないまたは特許性を有していない場合
・特許が無資格者に付与されている場合
・明細書における発明の開示が不十分な場合
・特許明細書が出願当初の明細書の開示範囲を超えている場合
・補正が認められないものである場合
・特許が、重要な情報の非開示または不正確な開示を含む場合
・ダブルパテントの場合

特許成立後の訂正

特許権者は、登録官に対して付与後の特許明細書の補正許可を申請することができる。侵害訴訟において、裁判所または登録官は、特許の明細書を裁判所または登録官が納得する程度まで補正する命令ができる。
従前は付与後の特許調査及び審査が認められていたが、改正によって再調査制度は廃止された。異議申立をする場合は、全請求項について取消を求めなければならない。

小特許/実用新案制度の有無

なし。