中国特許制度の概要

中国特許制度の概要

発明の保護対象

発明とは、製品、方法、又はその改良について出された新しい技術法案をいう(特許法2条)。
(1)科学的発見、(2)知的活動の規則および方法、(3)病気の診断及び治療法、(4)動物及び植物の品種、(5)原子核変換の方法により得られる物質は、保護対象から除外されている。

先願主義

同一発明については最先の出願人のみが特許権を取得できる。ただし、同一発明について同日に2以上の出願があった場合は協議で定めた出願人のみが特許権を取得できる。

出願言語

中国語のみ

出願に関する料金

出願料金: 明細書30ページ、クレーム10項まで950元(1元=約13円~18円程度)
追加明細書料: 31ページ~300ページまでは、(30ページを超えたページ数)×50元
        301ページ以上の場合、300ページを超えたページ数×100元
追加クレーム料: 150元/項
審査請求料: 2500元 優先権主張料 80元(パリ優先権主張出願の場合)

上記計算の明細書のページ数は、図面のページ数も含む(審査指南第5部分第2章1)。

*料金や換算レートは最新ではない可能性があることにご留意ください。

出願審査請求制度(特許法第35条)

あり。出願日(優先権主張出願の場合は優先日)から3年以内に可能。(PCTの場合も優先日から起算。)

早期審査制度

優先審査制度あり(専利法第35条)(①国家の利益或いは公共の利益にとって重大な意義をもつ出願、②専利局が自ら実体審査を開始した専利出願、③原出願日を保留してある分割出願は,原出願と共に審査を行ってもよい)。しかし、実務上ほとんど行われない。

所定の条件を満たせば、特許審査ハイウェイ(PPH)による早期審査を受けられる。PPHによれば、中国特許出願に対応する日本特許出願の審査結果(特許査定等)、又はPCT出願の国際段階における成果物(国際調査機関が作成した見解書等)を用いて早期審査を申請することができる。
中国では、出願公開されなければ審査が開始されないので、審査を促進させるためには早期公開請求(専利法第34条)を行うことが好ましい。

 

新規性の判断

出版物(世界主義)、国内外で公に使用(販売、展示、展覧、輸入など)及びその他の形で公開(口頭での情報伝達)されたものに基づいて判断。
以前は公知については国内主義を採用していたが、2009年10月1日施行の第三次改正により世界主義を採用した(22条)。

新規性喪失の例外規定(特許法第24条)

あり。中国への出願日前6カ月以内に以下の状況のいずれか1つがあった場合に適用。
・中国政府が主催、または承認した国際展示会で初めて展示された場合
・定められた学術会議あるいは技術会議で初めて発表された場合
・他人が出願者の同意を得ずに、その内容を暴露した場合

*試験、刊行物発表、インターネット上での発表は新規性喪失の例外の対象とはならない。

クレーム/明細書の記載要件

・クレームの記載要件
サポート要件、明確性要件(請求項は、明細書に基づいて、特許保護を要求する範囲を明確、簡潔に限定しなければならない、専利法第26条4項)。
クレームの形式としては、マルチクレーム(1つのクレームが複数のクレームを引用すること)は認められるが、マルチのマルチクレーム(複数のクレームを引用するクレームをさらに複数のクレームで引用すること)は認められない(特許細則規則23(2))。

・明細書の記載要件
実施可能要件(明細書には、発明または実用新型について、その技術分野に属する技術者が実施することができる程度に明瞭かつ完全な説明を記載しなければならない)。

発明の単一性の要件

二つ以上の発明が単一性を有する場合、一件の出願にまとめることができる(特許法第31条)二つの独立請求項が単一性を有するか否かは、同一の又は対応する特別な技術的特徴の有無により判断される(審査指南第2部分第6章2.2.1)。単一性違反は、拒絶理由であるが、無効理由ではない。

補正の機会

・実体審査の請求と同時
・実体審査開始の通知の受領から3カ月以内
・拒絶理由通知書(OA)に対する応答時
 1回目の拒絶理由の場合、OA応答期間は、拒絶理由通知の受領日から通常は4カ月(1カ月ごと延長可能、最大2カ月まで延長可能)
 ただし、受領日は、特許庁からの発送日に15日加算した日
 2回目以降の拒絶理由の場合、OA応答期間は、拒絶理由通知の受領日から2カ月(2カ月まで延長可能)
・PCT出願の場合のみ、国内段階への移行時
・不服審判請求時や専利複審委員会の審理通知書への応答時。ただし補正は指摘された不備を克服するものに限られる(実施細則第六十条)

補正の制限

出願当初の原明細書、クレーム、図面の範囲内。

ただし、拒絶理由通知書を受けた場合(項目6(3)の場合)は、上記の制限に加え、拒絶理由についての補正以外原則不可(明らかな誤記等は審査官の裁量で認められる場合がある)。拒絶理由に関係のない補正を従属クレームで行うことは認められない。また、独立クレームを追加する補正も不可。自発補正(項目6の(1)、(2))の場合には、独立項の追加は可能。なお、第三次法改正後、従属クレームを追加する補正が認められなくなった(詳細は下記の表(審査指南より)を参照)。

審査段階請求項不適法な補正 自発的に独立請求項の技術的特徴を削除し、特許請求の範囲を広げる
自発的に独立請求項の技術的特徴を変更し、特許請求の範囲を広げる
自発的に明細書のみに記載され、かつ原の発明主題とは単一性の要件を満たさない技術的特徴内容を新たな主題とする
自発的に原の特許請求の範囲中に記載されない新たな独立請求項を追加する
自発的に原の特許請求の範囲に存在しない新たな従属請求項を追加する
適法な補正 新たな技術的特徴を追加し、さらに独立請求項を限定する
独立請求項の技術的特徴を変更する
独立請求項の類型、主題、及びそれに対応する技術的特徴を変更する
一項又は多項の請求項を削除する
独立請求項の請求しようとする部分を、従来技術に対して境界を分ける
従属請求項の引用部分の引用関係を是正する
従属請求項の限定部分を是正し、従属請求項の請求しようとする範囲を明らかに限定する
不適法な追加 原の明細書又は/及び特許請求の範囲から直接に認定できない技術的特徴
原の明細書又は/及び特許請求の範囲から直接に、且つ疑問の余地なく確定できない内容
図面の測量で得られた寸法パラメータの技術的特徴
原の出願書類に記載されない付加組成を導入し、新たな特別効果が生じるようにする
当業者が直接に原の出願書類から推認できない効果を追加する
実験のデータ又は/及び実施形態の実施例を追加する
図面(但し、従来技術などの図面を追加することができる)
不適法な変更 請求項の技術的特徴を変更し、原の明細書及び特許請求の範囲を超えるようにする
明確ではない内容を明確にするため、新たな内容を導入する
分離した特徴を新たな組み合わせに変更する(原の出願書類にそれらの特徴同士の関係を明確に記載されていない)
明細書の技術的特徴を変更し、原の明細書及び特許請求の範囲を超えるようにする
不適用な削除 原の出願書類において必要な技術的特徴と認定される特徴を独立請求項から削除する
明細書に記載される技術手段に関する専門用語を請求項から削除する
明細書において明確に認定された適用範囲に関する技術的特徴を請求項から削除する
明細書からある内容を削除し、原の明細書及び特許請求の範囲を超えるようにする
数値に関する補正により、原の明細書及び特許請求の範囲を超えるようにする
拒絶査定不服審判に
係属するときの不適法な補正
補正された特許請求の範囲が、拒絶査定時の特許請求の範囲に対して保護範囲が広げられる
シフト補正
請求項の類型の変更又は請求項数の追加
拒絶査定に指摘されなかった請求項又は明細書の補正(明らかな誤記、拒絶査定に指摘された不備と同一性質の不備を除く)

拒絶査定の時期(2006年7月1日施行の審査指南による改訂)

拒絶査定は、原則的には2回目の拒絶理由通知書が出された後でなければならない。ただし、1回目の拒絶理由に対して説得力のある理由および証拠の提出ができなかった場合、審査官は2回目の拒絶理由通知書を出さずに拒絶することはできる。

出願公開制度

あり。原則として出願日から18カ月(優先権主張出願の場合は基礎出願日から18ヶ月)後に公開。早期公開制度あり。

分割出願の可能時期

審査係属中の場合、特許査定まではいつでも可能。特許査定受領後は、その受領日から2カ月以内であれば可能。拒絶査定となった出願については、拒絶査定通知を受領してから3カ月以内であれば可能。

孫出願(分割出願の分割出願)については、審査係属中の場合、原則として特許査定まではいつでも可能であり、特許査定の受領日から2カ月以内又は、拒絶査定通知から3カ月以内にも可能。ただし、親出願について分割出願できる期間が経過した後は、子出願が審査係属中であっても分割不可。しかし、孫出願が単一性違反を指摘された場合はこの期間に限らず分割可能(下記の表参照)。また、従来通り審判請求期間内に審判請求を行った場合、審決取り消し訴訟の提起を期間内に行った場合にも可能。

 親出願の分割可能期間内親出願の分割可能期間経過後
特許査定前/拒絶査定前 ×
拒絶査定受領から3カ月内 ×
特許査定受領から2カ月内 ×
単一性違反を指摘された場合
拒絶査定不服審判/当該審判の審決取消訴訟係属中 ×

分割出願の内容の制限

出願当初の明細書、クレーム、図面の範囲内であれば特に制限されない(独立クレームの追加等も可能)。

優先権主張出願

以下のものが可能。
・パリ条約に基づく優先権主張出願(PCTルートの出願含む)
・国内優先権主張出願(実施細則第三十三条で規定)

変更出願

原則として不可。ただし、優先権を主張する場合に、後の出願を基礎出願のものと違う種類の出願に変更(意匠→特許、実用新案→特許など)することは可能。

拒絶査定不服審判制度

あり。拒絶査定謄本の受領日から3カ月以内に請求可能。

特許料の納付時期

特許査定後2カ月以内。延長不可。

特許権の存続期間

出願日から20年で満了。延長制度なし。

異議申立制度

なし。2001年の法改正で廃止。

無効審判制度

あり。なお、無効審判を請求された特許権者は、その通知書に対する答弁時に、クレームのみ訂正可能。その際には、権利保護範囲を拡大してはならない。クレームの削除、結合(2つ以上のクレームを合わせて新クレームを作ること)は可能。

特許権成立後の訂正

日本国の訂正審判に相当する制度はない。ただし、特許権成立後に無効審判がなされた場合、クレームのみ訂正可能。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案制度あり。