img top01

お客様とともに歩き、
お客様の発展を、組織的に支援する知財の専門家
それが前田特許事務所です。

米国特許制度の概要

先発明者先願主義

以前は先発明主義を採用していたが、2011年の改正特許法(AIA;America Invents Act)により、2013年3月16日以降の出願日又は優先日を有する特許出願には、いわゆる先発明者先願主義が適用される。

すなわち、原則として同一発明については最先の出願人のみが特許権を取得できる。ただし、発明者又は共同発明者が発明を公表した場合、第三者が同一発明について当該公表後に特許出願しても特許を取得できず、公表日から1年以内に上述の発明者又は共同発明者が特許出願すれば、当該出願は発明の公表及び第三者による先願により拒絶されない。

出願の種類

  1. 仮出願
     仮出願とは、通常の特許出願の要件を満たさない簡易な形式による出願をいう(111条(b))。明細書と図面のみで、クレームがない場合でも、仮出願できる。仮出願は日本語でもできる。
     翻訳文は提出不要であり、仮出願の出願日から12ヵ月以内に、仮出願に基づく利益を主張して正規の出願をすることで、仮出願の日を最先の出願日とすることができる。なお、米国ではこの仮出願の制度があるため、国内優先権主張出願はない。
  2. 審査請求料
  3. 分割出願(Divisional Application)
     可能時期:親出願に対する特許付与、または、親出願の放棄もしくは手続終了の前、すなわち、親出願が特許庁に係属しているとき。
     内容の制限:親出願に開示された範囲内のみ可能
  4. 継続出願(CA:Continuation Application)
     可能時期および内容の制限は、分割出願と同じ
  5. 一部継続出願(CIP:Continuation-in-Part Application)
     可能時期は、分割出願および継続出願と同じ
     内容の制限:親出願に開示された範囲を超えて行うことができる。ただし、追加された部分については、有効出願日は当該一部継続出願の出願日となる。
  6. 変更出願
     出願日から1年以内に正規の出願から仮出願への変更が可能。継続出願することにより、特許出願から意匠特許出願への変更が可能。

発明の保護対象

プロセス(方法)、機械、生産物、組成物の4つが法定の保護対象となっている(特許法101条)。抽象的な概念(abstruct idea)、自然法則、自然現象などは保護対象とならない。天然物そのもの(ゲノムDNAや単体の元素、自然に存在する微生物等)も保護対象ではない。コンピュータプログラムは保護対象ではない。医療方法は保護対象であるが、医療方法についての特許権は、原則として医師等の医療行為には及ばない(特許法287条)。
なお、有用性があること及び二重特許ではないことも特許を受けるための要件となっている。

出願言語

原則として英語(英語以外の言語でも出願可能であるが、その場合は補充指令通知から2カ月以内に英語翻訳文の追補が必要)。

IDS(情報開示陳述書)

特許出願またはその手続に関与する者(発明者・譲受人・代理人等)は、特許性に関する重要な全ての情報を開示する義務を負う。「重要な情報」とは拒絶理由を形成できるものや、出願人が米国特許庁で行った主張と矛盾するもの等を指す。開示義務を負う期間は、出願から登録まで。

出願に関する料金(*最新の料金についてはUSPTOのウェブサイト等でご確認ください)

・出願費用: 280ドル(独立項3つ、クレーム数20まで定額)
       クレーム数が20を越えた場合、越えたクレーム数×80ドルの加算
       独立項が4つ以上の場合、(独立項数-3)×420ドルの加算
       マルチ従属クレームがある場合、780ドルの加算
       100ページを越えた場合、50ページ毎に400ドルの加算。
・調査料: 600ドル(出願時に必要)
・審査料: 720ドル(出願時に必要)

*出願人の企業規模によって料金が通常の50%又は25%に減額される制度がある。

出願審査請求制度

なし

新規性の判断

以下の1、2に該当する場合、原則として発明は新規性を有さない。

 

  1. 他の発明者による同一発明が有効出願日前に先に出願されており、且つ当該先の出願の同一発明についての特許が発行されるか、出願公開された場合(特許法102条(a)(2)。
  2. 発明が、出願日又は優先日(すなわち有効出願日)前に、特許され、印刷刊行物に記載され、公に使用され、販売され、又はその他公衆に入手可能である場合(特許法102条(a)(1))。

新規性喪失の例外規定

発明の有効出願日前1年以内にされた開示は、新規性違反の先行技術とはならない(特許法102条(b)(1))。開示行為の内容は、発明者又は共同発明者によるものであれば、特に限定されない。

クレーム/明細書の記載要件

  1. 明細書の記載要件
    「明細書は,その発明の属する技術分野又はその発明と極めて近い関係にある技術分野において知識を有する者がその発明を製造し,使用することができるような完全,明瞭,簡潔かつ正確な用語によって,発明並びにその発明を製造,使用する手法及び方法の説明を含まなければならず,また,発明者又は共同発明者が考える発明実施のベストモードを記載していなければならない。」(112条(a))
    • 発明の記述要件(サポート要件)
    • 実施可能要件
    • ベストモード要件(ただし、AIAにより無効理由から除外された)
  2. クレームの記載要件
    「明細書は,発明者又は共同発明者が発明とみなす主題を特定し,明白にクレームする1又は2以上のクレームで終わらなければならない。」(112条(b))
    • 明確性要件
      なお、複数クレームを引用する複数のクレームを引用すること(いわゆるマルチのマルチ)は不可。また、複数クレームを引用するクレームが含まれる場合には、追加料金が必要。 

限定要求/選択要求

2つ以上の独立した別個の発明が一つの出願中にクレームされている場合、審査官は出願人に対し、クレームをグループに分けた上でクレームの限定を要求することができる。出願人の応答により、選択されなかったクレームのグループは、審査対象から外される。
応答を書面で行う場合、応答期間は2ヵ月(延長可能)。
また、一つの出願中に一つの包括クレームと、この包括クレームに包含される複数の種(実施例)とがある場合、審査官は包括クレームが許可されないときに備えて種を選択するように要求することができる。応答を書面で行う場合、応答期間は2ヵ月(延長可能)。

補正の機会

最初の拒絶理由通知(First Office Action)を受けるまでは原則としていつでも明細書等の補正ができる。最初の拒絶理由通知を受けた場合、当該拒絶理由通知を受けた日から3ヵ月以内(最大6ヵ月まで延長可能)に補正可能。最終拒絶理由通知(Final Office Action)を受けた場合、最終拒絶理由通知を受けた日から3ヵ月以内(最大6ヵ月まで延長可能)に補正可能。

補正の制限

最初の拒絶理由通知を受ける前、及び最初の拒絶理由通知に対して応答する場合には、明細書等により開示された範囲内で補正できる。

最終拒絶理由通知に対して応答する場合には、明細書等により開示された範囲内であって、

  • クレームの削除、
  • 指摘された方式不備の解消、
  • 審判請求のためによりよい形式にする補正

のいずれかしか認められない。

出願公開制度

あり。特許出願は、最先の出願日から18ヵ月経過後に公開される(特許法122条)。ただし、国家の安全のために秘密保持命令の対象となっている出願、仮出願、非公開請求をした出願等は出願公開されない。

加盟している条約

パリ条約、PCT、WTO協定、ブダペスト条約、特許法条約

優先権主張出願

パリ条約及びPCTに基づく優先権主張出願が可能。

早期審査等

  1. 特許審査ハイウェイ(PPH)
    現在はGlobal PPH及びIP5 PPHという名称で試行的プログラムとして実施されている。日本の特許出願における特許査定や、PCT国際出願段階の成果物を用いてPPHの利用申請が可能。尚、PPHの申請に庁費用は発生しない。
  2. 早期審査
    費用が安価であることや、平均12カ月以内に審査が終了すること、オフィスアクションの回数が減るといった利点がある。オフィスアクションに対する応答期間が通常より短く延長不可であることに留意が必要。出願人は、各クレームの特許性について先行技術調査を行い、先行技術文献をIDSとして提出し、AESD(Accelerated Examination Support Document)において、特許性があることを説明する必要がある。
    PCT国際出願からの米国国内移行出願(バイパス継続出願を除く)は早期審査対象外。
  3. 優先審査
    平均12カ月以内に許可通知もしくは拒絶査定が発行される。早期審査の際に提出が求められるような書類が不要であり、オフィスアクションに対する応答期間も通常通りであるが、費用が高額(4800ドル)で、クレーム数への制限(独立クレーム4つ、トータルクレーム数30個まで)などがある。

特許料の納付時期

許可通知が出てから3カ月以内が最初の登録料の納付期限(登録日から4年間権利が維持される)。その後、特許権を維持するためには3回の特許料の納付が必要。

  • 1回目の納付時期:特許日から3~3.5年後の間
  • 2回目の納付時期:特許日から7~7.5年後の間
  • 3回目の納付時期:特許日から11~11.5年後の間

※また、各期間経過後であっても6カ月以内に割増料金(通常160ドル)を付加して支払えば権利を維持することができます。

特許権の存続期間

特許権の存続期間は、原則として、米国出願日(PCT国際出願経由の場合は、国際出願日)から起算して20年。

※1995年6月8日以前に出願されて同日現在出願係属中のもの、及び権利係属中のものについては「出願日から20年」または「特許付与日から17年」のうちいずれか遅く終了する期間までが存続期間。但し、同日より前に出願されたものでも、これに基いて同日以降に継続性出願(継続出願、一部継続出願、分割出願等)を行った場合には、存続期間は一律に最先の親出願から20年。尚、同日より前に存続期間が満了しているものは、登録から17年。

  • 仮出願に基く本出願の存続期間の起算日は本出願の出願日ですが、仮出願を本出願に出願変更した場合の起算日は仮出願の出願日。
  • 再発行特許権の存続期間は原特許権の存続期間。
  • ターミナルディスクレーマー特許の存続期間は、対象の先願特許の満了日まで。
  • 上記の存続期間は当該特許が医薬品に関するものであったり、審査の遅延を原因として延長される場合がある。この場合には特許公報に延長日数が掲載される。
  • 2000年5月29日以降に出願された米国特許出願で、当該出願が登録されるまでの間の審査期間中に米国特許商標庁(USPTO)の処理に時間がかかった場合には、一定の条件下で特許権の存続期間が延長される。

継続審査請求(RCE:Request for Continued Examination)

RCEとは、同一出願内で、審査の継続を求める請求のことをいう。

可能時期:出願の審査が終了した後で、かつ、特許料の支払い前、特許出願の放棄前、審決に対する出訴前であるとき。

例えば、ファイナルアクションを受領した後に、補正によってクレームに明細書等の開示範囲内で新たな事項を追加したい場合や、アドバイザリ通知を受け、審査のやり直しを求めたい場合などに、継続審査請求を行う。

拒絶査定不服審判制度

特許出願のクレームが2度以上拒絶された場合、出願人は、特許公判審判部(PTAB)に審判請求することができる。最終拒絶通知から原則として3カ月以内に請求可能(最大6カ月まで延長可能)。審判請求から2カ月以内に審判理由補充書を提出する必要がある。審判理由補充書の提出までは最終拒絶通知後と同様のクレーム補正ができるが、審判理由補充書の提出後は、クレームの削除、又は従属クレームの独立形式への書き換えを除いて補正は認められず、新たな証拠の提出も認められない。

Pre-Appeal Brief Conference procedureを請求する場合、審判請求と同時に5ページ以内の”a Request for Pre-Appeal Brief Conference” を提出する。その後、USPTOから出願のステータスに関する決定が通知される。この際、(a)審判手続をする少なくとも一つの実効的な争点が存在するので、本審判手続を続行する、(b)本件のプロセキューションを再開する(追って、Official Communication が送達される)、(c)出願が許可可能状態にあるので、プロセキューションを終了する、(d)要件を満足していないので、本審判請求を却下する、のいずれかが通知される。

異議申立制度(PGR(Post Grant Review:付与後レビュー))

PGRは、特許発行日から9カ月以内に請求することができる。

  • 特許権者以外の者が請求可能。匿名での請求は不可。
  • ベストモード要件を除く、全ての理由で請求可能。
  • 2013年3月16日以降の有効出願日を有する特許が対象。

当事者系レビュー(IPR(Inter Partes Review))

特許発行日から9カ月経過後以降に請求できる(PGRが開始された場合は、そのPGRが終了した日以降に請求可能)。

特許権者以外の者が請求可能。匿名での請求は不可。

請求の理由は、特許または刊行物に基づく新規性・非自明性のみ。全ての特許が対象である。

特許許可後の訂正

許が付与された後に明細書等の訂正をする方法は、3つある。

  1. 訂正
    特許権者のみが行うことができる。特許権の効力に影響を与えない誤記や、方式的な誤りがある場合に、明細書等を訂正することができる。
  2. 特許の再発行(reissue)
    元の特許の発行から2年以内に特許権者が利用できる。特許成立後にクレームを拡張する唯一の手段。
  3. 査定系再審査
    印刷刊行物に基づく特許性を特許庁に再度審査してもらう制度であり、特許権者又は第三者が請求可能。再審査手続きの中でクレームの訂正が可能。

小特許/実用新案制度の有無

実用新案制度はない。