特許出願非公開制度について
令和6年5月1日より、経済安全保障推進法に基づいて、特許出願非公開制度が開始されました。
特許出願非公開制度は、特許出願の明細書等に、「公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」が記載されていた場合に、「保全指定」という手続により、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった特許手続を留保するとともに、その間、公開を含む発明の内容の開示全般やそれと同様の結果を招くおそれのある発明の実施を原則として禁止し、かつ、特許出願の取下げによる離脱も禁止することとしています。
特許出願を非公開にするかどうか(保全指定をするか否か)の審査は、特許庁による第一次審査と、内閣府による保全審査(第二次審査)の二段階に分けて行われます。特許庁の第一次審査は、「新規性・進歩性等の特許要件を判断するための審査手続」とは別に行われますので、第一次審査や保全審査の結果が出る前に審査請求を行うことは可能です。
【第一次審査(法第66条)について】
特許庁の第一次審査では、特許出願の中から、国際特許分類等に基づいて特定技術分野(「航空機等の偽装・隠ぺい技術」など、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野であり、国際特許分類を用いて政令で定めています。)に属する発明が記載されている出願を選別して内閣府に出願書類を送付して保全審査に付します。
※令和5年8月、特定技術分野及び付加要件を政令で定め、令和7年1月1日に発効する国際特許分類の改正に伴い、国際特許分類記号を変更した政令が施行される予定です。
内閣府では、特許庁から送付された出願についてのみ保全審査を行います。第一次審査の結果、保全審査に付す場合、出願日から3か月以内に特許庁長官から出願人又は代理人に書留郵便で通知が行われます。保全審査に付されなかったことの通知を希望する場合は、「不送付通知申出書」を提出する必要が有ります。
【外国出願禁止の事前確認(法第79条)について】
日本に出願された発明を保全指定して非公開となった場合でも、同じ発明が外国で出願されて公開されてしまうと、保全指定した意味がなくなるため、特許出願非公開制度の開始後は、日本国内でした発明で公になっていないもののうち、日本に特許出願すれば保全審査に付されることになる発明については、原則として、外国出願(PCT出願も含まれます)よりも先に日本に特許出願(第一国出願)しなければなりません(法第78条第1項本文)。
この規定に違反して日本での出願前又は保全審査に付されてそれが終わる前に外国出願をしたときは、1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又はこれらの併科という刑事罰の対象となります(法第 78 条第1項、第 94 条)。
また、保全対象発明について外国出願をしたときは、法第 74 条第1項で禁止する保全対象発明の内容の開示に当たるため、2年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれらの併科という刑事罰の対象となります(法第 92 条第1項第8号)。
特定技術分野に属しないことが明らかな発明など、外国出願禁止の対象とならない発明は、従来どおり、日本へ特許出願せずに外国出願することが可能ですが、判断に迷う場合には、特許出願非公開制度に伴い新設される外国出願禁止の事前確認(日本へ特許出願せずに外国出願禁止の対象であるか否かを事前確認する制度)を利用できます(法第79条第1項)。
但し、外国出願禁止の対象となる発明については、日本へ特許出願(第一国出願)をして保全指定を受けなければ外国出願が可能になるのに対して、外国出願禁止の事前確認では原則として外国出願が禁止されますので、国内で特許出願をして保全審査を受ける方が、外国出願禁止の事前確認を利用する場合に比べてより幅広い発明が外国出願禁止の対象から外れることになります。
さらに詳しい内容をお知りになりたい方は、下記のURLをご覧ください。
【特許出願非公開制度】
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/index.html
【特許出願の非公開に関する制度】
https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/patent/patent.html
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