特許無効審判請求および特許異議申立に関する近年の件数推移および傾向とは

Q:
特許無効審判請求および特許異議申立に関し、近年の件数推移および傾向について教えてください。

A:
 2024年7月に特許庁から『特許行政年次報告書2024年版』(以下「報告書」と呼称します。)が公表されています。
 報告書の第1部には、「グラフでみる主要な統計情報」として、第1章「国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状」が詳細に報告されています。この第1部第1章の37頁および38頁には、審判の請求動向として、拒絶査定不服審判請求・前置審査結果・無効審判請求・訂正審判請求・異議申立・取消審判請求の各々に関する近年の件数推移が示されています。
 以下に示すように、特許の無効審判請求に関しては、請求件数が年々減少しています。
 これに対し、特許の異議申立に関しては、申立件数が年々増加しています。

[特許無効審判請求:近年の件数推移](報告書37頁1-1-112図から一部抜粋)
  ・2021年の請求件数: 106件
  ・2022年の請求件数:  97件
  ・2023年の請求件数:  84件

[特許異議申立:近年の件数推移](報告書38頁の1-1-114図から一部抜粋)  
  ・2021年の請求件数:1,260件
  ・2022年の請求件数:1,322件
  ・2023年の請求件数:1,411件

 また、報告書39頁の1-1-117図には、『2023年 審理結果の概要』が示されています。
  以下に示すように、特許・実用新案の無効審判では、「請求成立」(無効)となった件数が「請求不成立」(無効ではない)となった件数を上回っています。これに対し、特許異議申立では、「取消決定」となった件数が「維持決定」となった件数を大幅に下回っています。

[無効審判請求(特許・実用新案の当事者系審判):2023年の審理結果]
  ・「請求成立」となった件数:164件
  ・「請求不成立」となった件数:81件

[特許異議申立:2023年の審理結果]
  ・「取消決定」となった件数:136件
  ・「維持決定」となった件数:1,220件

 上記の統計的な事実のみからまとめますと、当事者対立構造を採用する無効審判制度では、特許異議申立よりも利用しにくい反面、「請求成立」(無効)となる割合が特許異議申立の「取消決定」となる割合よりも高いといった傾向が見られます。
 これに対し、何人も申立可能な特許異議申立制度では、比較的利用しやすい反面、「取消決定」の結果を得ることが意外に難しいといった傾向が見られます。

 上記の傾向はあくまでも統計に基づく一般論であり、個々の事案により結果の行方が変わります。しかしながら、特許無効審判制度および特許異議申立制度のどちらの制度を利用すべきかといった場面では、今回紹介しました『特許行政年次報告書』のような一般的な統計が参考になるものと思います。

◆『特許行政年次報告書2024年版』
 https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/index.html

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