『Palworld』はなぜ特許権侵害で訴えられたのか

Q:
任天堂とポケモンが、ゲーム「ポケットモンスター」のキャラクターによく似たキャラクターが登場するゲーム『Palworld』を開発、販売、運営しているポケットペアを、特許権侵害で訴えた、と聞きました。キャラクターが似ていれば、著作権侵害で訴えるのが普通だと思いますが、なぜ、任天堂とポケモンは特許権侵害で訴えたのですか?

A:
 まず、そもそも、特許権と著作権では、権利の法的性格が異なります。特許権の場合は誰に対しても自分の権利が主張できる「絶対的権利」であるのに対し、著作権は、特定の人にしか自分の権利が主張できない「相対的権利」です。

 具体的に説明すると、特許権の場合には、権利の内容を第三者が知らなくても、その第三者に権利行使できるの対して、著作権の場合は、権利の内容を知っている人(「依拠」している人)にしか、権利行使ができません。すなわち、全く同じ内容の著作物(キャラクター)を、第三者が発表してもその著作物(キャラクター)を第三者が偶然に独自に考えて発表していた場合には権利行使ができないのです。また、著作権の場合には「類似」と言われる範囲が不明確で、どの程度似ていれば「類似」と判断されるか、裁判官の裁量が大きく、侵害していると判断してもらえない可能性もあります。具体的には「侵害著作物から、被侵害著作物の本質的特徴を感じ取ることができるか」が判断基準ですが、「本質的特徴」が何なのか、実際に裁判になってみないと分かりません。

 「ポケットモンスター」のキャラクターは、ゲームが好きな方の間では著名なので、ゲームソフトに携わるゲーム会社であれば、当然、知っていると思われるため、依拠性は認められるでしょう。しかし、類似性においては、判断が分かれる可能性が高いと思います。

 よって、任天堂とポケモンは、非侵害と判断される可能性がある著作権よりも、確実に侵害と判断される特許権を使って訴訟を提起したのでしょう。

 なお、補足情報として、懸案特許の1つは、任天堂とポケモンが共有している特許第7545191号「ゲームプログラム、ゲームシステム、ゲーム装置、およびゲーム処理方法」が考えられています。この特許権は、3回にわたって分割した上で権利化されたもので、2024年7月30日に「スーパー早期審査」の手続を使って出願して、8月27日に登録されたものです。通常の権利化経過を知っている者からすると、明らかに、この特許権は、ゲーム内容を把握した上で「使える特許」として、極めて早期に権利化された特殊なものであること分かります。

 こうしたことから、任天堂とポケモンは、本気で、ゲーム『Palworld』を市場から排除しようとしていることが伺えます。

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