特許請求の範囲を記載する場合の形式的な注意点は
Q:
特許請求の範囲を記載する場合の形式的な注意点について教えてください。
A:
特許請求の範囲を記載する場合に、サポート要件や明確性の要件を満たす必要があることは、普段から注意されていることかと思います。これらの実体的な要件は特許法の第36条に規定されています。一方、形式的な記載の仕方については、特許法施行規則(経済産業省令)で規定されています。もっとも、実務者の方は、通常、“普通の書き方”をすれば、これに従った記載になっているかと思いますし、チェックソフトでチェックされることもあったりして、普段、意識することはあまりないかも知れませんが、一応、形式的な点は、このように定められているというのをご紹介します。
特許請求の範囲の記載については、特許法施行規則の第24条の3で次のように規定されています。
第1号 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
第2号 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
第3号 請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
第4号 他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。
第5号 他の二以上の請求項の記載を択一的に引用して請求項を記載するときは、引用する請求項は、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用してはならない。
これらのうち、場合によっては注意するのがよいかと思われるのは、2、4、5号でしょうか。
2号や4号の、請求項番号を連続番号にすることや、他の請求項を引用する請求項は引用される請求項より後に記載することは、特許請求の範囲を推敲して請求項の追加や削除、順序変更をするときには気をつける必要があります。
また、5号は、いわゆるマルチマルチクレームが令和4年4月1日以降に禁止されるようになったものですが、マルチマルチクレームが記載されていると、他の要件については審査されることなく拒絶理由が通知され、それが補正により解消されても、他の拒絶理由がある場合には、最後の拒絶理由通知がなされて補正の制限が厳しくなりますので、やはり気をつける必要があります。
ところで、他の請求項を引用する場合、引用される請求項の請求項番号は、引用する請求項の先頭に記載する方法と、末尾に記載する方法とがあります。各社様、伝統やこだわりなどによって、どちらかを採用されているかと思います。どちらでも法律的には違いはありませんが、個人的には、どちらかといえば程度の理由ですが、次のような点で、先頭に記載するのがお勧めと考えています。
・ 先頭に記載する場合には、請求項番号が決まった桁位置に記載されているので、視認性が若干よいかも知れないと考えます。
・ 請求項を追加削除したり引用関係を変更したりして請求項番号を修正するときも、どの請求項も同じ桁位置の請求項番号を修正すればよいので、作業性やミス防止などの点で、若干有利かも知れないと考えます。
・ PCT出願(国際出願)についての特許協力条約では、「特許協力条約に基づく規則」(第六規則)に、「可能なときは冒頭に、他の請求の範囲を引用して行い」と規定されています。そこで、優先権主張してPCT出願する可能性があって、「特許協力条約に基づく規則」に従う意向がある場合には、国内出願の段階から、引用される請求項の請求項番号を請求項の先頭に記載しておけば、PCT出願するときに手を加える必要がなくなることになります。
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