日本におけるAI関連発明の最新動向
―特許庁2025年調査報告のご紹介―
日本特許庁は2025年10月に、「AI関連発明」の出願状況を網羅的に分析した報告書を公表しました。
本調査は1988年以降の出願を対象としつつ、特に近年の動向として2014~2023年の日本向け出願を詳細に検証しています。18か月の公開ラグを踏まえると、第四次AIブーム下の出願状況をほぼ最新の姿で捉えたものといえます。。
1. AI適用発明の増加とビジネス分野の伸長
日本へのAI関連発明の出願件数は、2018年の4,872件から2023年には11,445件へと、5年間で2倍以上に増加しました。もっとも、この増加の主役はAIコア技術そのものではなく、コア技術を応用したビジネス・産業分野の発明です。AI関連全体に占めるAIコア技術(G06N)の比率は、2018年32.0%から2023年20.9%へ低下しており、出願の重心がアプリケーション側に移っていることが読み取れます。

2. 主要出願人ランキング
2014~2023年の日本向けAI関連発明の出願件数上位30社のランキングでは、1位ソフトバンク、2位NTT、3位富士通となっています。
時期別に見ると、2014~2018年(前期)の上位3社はNTT、富士通、日立製作所でしたが、2019~2023年(後期)にはソフトバンク、キヤノン、日本電気がトップ3となり、顔ぶれが入れ替わっています。特にソフトバンクは2023年に生成AI関連特許を多数出願し、後期ランキングで一気に1位へと躍進したと報告されています。

この動きは、同社が国内最大級の生成AI開発向け計算基盤を稼働させ、日本語特化の大規模言語モデル(LLM)を本格開発すると発表していることとも軌を一にします(※1)。
また、2023年10月の「SoftBank World 2023」において、孫正義会長より1万件以上の出願がされたことが発表され、最新の公開状況をみると、2023年に1万件以上の出願がされていることが確認できます。出願件数が膨大なため、2024年以降の出願の審査において、拒絶理由の引例になるなどの影響が出始めているようです。なお、日本向けAI関連発明の上位30社のうち、外国籍出願人としてはGoogle、IBM、Philips、Baidu、Tencent、Robert Boschなどがランクインしており、海外テック企業も継続的に日本市場での権利化を進めています。
3.その他のトピックス
AI関連発明全体の特許査定率は、2004年の56.8%から上昇を続け、2023年には88.0%に達しています。日本において適切にクレームを構成し、ビジネス適用や医療・ヘルスケア等の具体的な利用場面を明確にした出願を行えば、比較的高い確率で権利化が期待できる環境にあります。

また、生成AI関連技術に言及する出願は2022年以降に本格化したばかりであり、外国で行われたPCT出願の日本国内移行も増加していることが想定されます。また、上記のとおり、AI関連出願の出願数が増加傾向にあること、ソフトバンクの1万件の出願についての審査が開始されることなどから、日本市場では今後数年にわたり、ビジネス分野を中心とした生成AI適用発明の公開・審査が本格化する局面を迎えることになりそうです。
※1 https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2023/20231031_01/?utm_source=chatgpt.com
※2 https://www.softbank.jp/business/content/blog/202310/sbw2023-softbank-son-main-keynote
