「除くクレーム」とする補正について
1.イントロダクション
日本の特許出願の審査基準では、クレームを「除くクレーム」とする補正が認められている。「除くクレーム」とは、クレームに記載した事項の記載表現を残したままで、クレームに係る発明に包含される一部の事項のみをそのクレームに記載した事項から除外することを明示したクレームをいう。今月号では、「除くクレーム」とする補正の注意点について説明する。
2.「除くクレーム」の注意点
まず、出願人は、「除くクレーム」により、新規性の主張はできるが、進歩性の主張は困難な場合が多い点に注意すべきである。「除くクレーム」の補正により特許を受けることができる発明は、拒絶理由で引用された引用発明と比較して技術的思想が顕著に異なり本来進歩性を有するが、一部が形式的に引用発明と重なるような発明である。言い換えると、引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合は、「除くクレーム」の補正により進歩性欠如の拒絶理由が解消されることはほとんどないと考えられる。出願人が「除くクレーム」の補正により進歩性欠如の拒絶理由を解消したことを主張すると、その補正により、クレームに係る発明の技術的思想が、引用発明の技術的思想とは顕著に異なるものへと変化している可能性がある。そのため、当該補正は、新規事項の追加になるという疑義が生じる。
さらに、出願人は、「除くクレーム」により、明確性が損なわれないようにすることにも注意すべきである。「除くクレーム」においては、「除く」部分が、クレームに係る発明の大きな部分を占める又は多数にわたる場合、一の請求項から一の発明が明確に把握できずに、明確性が損なわれる場合がある。また、「除く」部分が、拒絶理由通知で引用された文献中の表現を借りて記載されている場合には、たとえ出願時の技術常識を考慮しても、当該文献の内容を確認しない限り発明を明確に把握できず、明確性が損なわれる場合がある。
3.「除くクレーム」の例
審査基準には、引用発明による新規性欠如の拒絶理由を解消するために、許容され得る「除くクレーム」として以下が例示されている。
[補正前の請求項] 陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。
[引用発明] 陰イオンとしてCO3イオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。
このとき、補正前の請求項から引用発明との重なりを除外する目的で、以下の補正を行うことができる。
[除くクレームによる補正後の請求項] 陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩(ただし、陰イオンがCO3イオンの場合を除く。)を主成分とする鉄板洗浄剤。
4.コメント
「除くクレーム」の補正を行うと、第三者が、「除く」部分を充足しないような実施を行うことで、特許侵害を容易に回避して発明を実施し得ることに注意すべきである。例えば、組成物の発明において、特定の成分が「除くクレーム」により除かれると、第三者は、除かれた成分をわずかにでも含有する組成物を調製することで、特許侵害を容易に回避できてしまう。このため、クレームの補正の際は、「除くクレーム」を検討する前に、ほかの補正方法又は主張を検討すべきである。例えば、審査基準に記載された上記例では、補正前の請求項と、引用発明とで、開示している技術的思想が明らかに異なっているから新規性欠如という認定が妥当でない、という主張も検討すべきである。
出典:
https://www.jpo.go.jp/e/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/all_e.pd
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/letter/nozoku.html
