特許行政年次報告書 2024年版発行

1.イントロダクション
 「特許行政年次報告書2024年版」が、特許庁より発行された。本報告書には、2023年迄の産業財産権に関する各種統計が記載さている。今月号では、本報告書の中から、主に、特許、実用新案、意匠及び商標に係る出願及び審査の状況について紹介する。

2.特許
 特許出願件数は、2019年まで減少傾向が続き、2020年以降は29万件弱にて横ばいで推移していたが、2023年は300,133件(前年比3.6%増)若干の増加が見られた。外国人による出願は、7.1万件程度であり、出願全体の23.7%を占めている。


        特許出願件数の推移           JPOにおける特許出願構造

 2023年における審査請求件数は、230,184件であった。
 出願年と審査請求年とが異なるため単純な比較はできないが、出願件数が近年29万件程度で推移していることから、全出願に対して80%程度の割合で審査請求がなされていることが分かる。


審査請求件数の推移

 2023年における特許の「権利化までの期間」は平均13.8か月、「一次審査通知までの期間」(FA期間)は平均9.4か月であった。昨年に引き続き、短縮されている傾向にある。2023年(処分日基準)における特許査定率は、76.0%であり、他国と比較して相対的に高い水準にある。

3.実用新案
 実用新案登録出願件数についても、2023年は、2022年と比較して9.6%増加して、4,949件であった。2023年における外国人による日本への実用新案登録出願件数は、2,081件であり、実用新案登録出願件数全体の42.0%を占めた。


実用新案登録出願件数の推移

 日本の実用新案制度は無審査登録主義を採用しているため、方式要件及び一定の基礎的要件に不備が無ければ、3か月程度で実用新案権が設定登録される。実体審査を行わない実用新案制度においては、権利行使するにあたり、実用新案技術評価書を提示して警告を行う必要がある。実用新案技術評価書には、新規性・進歩性等に関する審査官の評価が示される。2023年における実用新案技術評価書の作成件数は、260件であった。

 
実用新案技術評価書作成件数の推移

4.意匠
 意匠登録出願件数は、約3万件で推移しており、2023年は、31,747件であった。その内訳をみると、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際意匠登録出願件数は4,160件、それ以外の通常の意匠登録出願件数は27,587件であった。また、関連意匠の出願件数は3,966件であった。

 
意匠登録出願件数の推移

 2023年における意匠の「権利化までの期間」は平均6.8か月、「一次審査通知までの期間」(FA期間)は平均6.0か月であった。意匠の登録査定率は公表されていないが、2023年における意匠登録件数は、27,000件であった。


    意匠審査の権利化までの期間の推移            意匠審査の登録査定件数の推移

2023年における外国人による日本への意匠登録出願件数(国際意匠登録出願を含む)は10,930件であり、意匠登録出願件数全体の34.4%を占め、増加傾向にある。


JPOにおける意匠登録出願構造

5.商標
 2023年における商標登録出願件数は、164,061件であった。マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願が17,397件であり、それ以外の通常の商標登録出願件数は146,664件であった。また、マドリッド協定議定書に基づく日本国特許庁を本国官庁とする国際出願件数は16,769件であった。


      商標登録出願件数の推移         マドリッド協定議定書に基づく国際出願

 2021年以降、商標審査が迅速化されている。2023年における商標の「権利化までの期間」は平均7.3か月、「一次審査通知までの期間」(FA期間)は平均6.1か月であり、短縮の度合いが緩和されている。それに伴い、2023年は、登録件数が125,973件と大幅に減少している。


 商標審査の権利化までの期間         商標審査の登録査定件数の推移

 2023年における外国人による日本への商標登録出願件数(国際商標登録出願を含む)は、41,848件であり、商標登録出願件数全体の28.5%を占めた。


  JPOにおける商標登録出願構造

6.まとめ
 特許については、出願件数が少しながら増加に転じており、今後の出願件数の推移を注視したい。実用新案については、外国人による出願比率が40%を超えている。意匠については、全体の出願件数としては横ばい状態が続いているが、外国人による出願が増加傾向であり、中国、米国、欧州のそれぞれにおいて、前年よりも日本への出願が増加している。中国、米国、欧州では、意匠登録出願が少しずつ増加している傾向にあり、その影響があるのかもしれない。商標については、審査期間の大幅な短縮がひと段落した影響もあり、2023年の登録査定件数が大きく減少した。出願件数は、登録査定件数ほどの落ち込みではないので、2024年は2023年より増加することが予想される。

(出典)
 https://www.https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2024/document/index/all.pdf

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