仮想空間において用いられる画像の意匠登録出願に関するガイドブック
1.イントロダクション
2019年の意匠法改正により、物品から離れた画像自体にまで保護対象が拡充されたが、その後、急速に発展したメタバース等の仮想空間で用いられる画像の中には、これまでの一般的な画像とは異なる性質を備えたものが多く見られるようになった。そこで、特許庁は、「仮想空間において用いられる画像の意匠登録出願に関するガイドブック」において、仮想空間上のデザインについて画像意匠として保護可能な範囲に関する基本的な考え方を整理するとともに、意匠法の保護対象として認められる画像と認められない画像とを事例形式で示した。
2.改正意匠法
意匠の定義は、意匠法第2条第1項において次の通り定められている。意匠法の保護対象は、従来、物品に限られていたが、2019年の改正によって、これに加えて建築物及び画像も、意匠法による保護対象となった。
(意匠法第2条第1項)
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しく
はこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等
又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの
に限り、画像の部分を含む。)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
条文が示す通り、全ての画像が意匠法の保護対象となるわけでない。意匠法の保護対象となる画像は、「機器の操作の用に供されるもの」(操作画像)又は「機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの」(表示画像)に限られる。
条文に規定された「機器」は、現実空間における実際の機器に限定され、仮想空間に表された電化製品の3Dオブジェクト等のような仮想的な機器を含まない。
仮想空間において用いられる画像であっても、操作画像又は表示画像に該当すれば、意匠登録を受けられる可能性がある。
3.注意事項
上述したように、条文に規定された「機器」は、仮想空間に表された電化製品の3Dオブジェクト等のような仮想的なものは該当しない。したがって、仮想空間に表された仮想的な機器の操作の用に供される操作画像や、仮想空間に表された仮想的な機器がその機能を発揮した結果として表示される表示画像は、画像意匠として意匠登録を受けることができない。
画像意匠として意匠登録を受けるためには、現実の機器の操作の用に供される操作画像又は現実の機器がその機能を発揮した結果として表示される表示画像でなければならない。
図1に示す冷蔵庫は、仮想空間に表された冷蔵庫であるが、現実の冷蔵庫に紐づいている。この場合、現実の冷蔵庫の在庫を確認するための操作の用に供される在庫確認操作画像は、「操作画像」として、意匠登録が認められる。現実の冷蔵庫がその機能(庫内温度調整機能)を発揮した結果として表示される設定温度表示画像は、「表示画像」として、意匠登録が認められる。
仮想空間において用いられる画像の意匠登録出願に関するガイドブック(特許庁)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/document/kaso-gazo-guidebook/guidebook.pdf