AI時代の知的財産権検討会、「中間とりまとめ(権利者のための手引き)」を発表
今回の知財ニュースは、内閣府に設置された「AI時代の知的財産権検討会」が先月、「中間とりまとめ」-権利者のための手引き-を発表したことについて、紹介させて頂きます。
出典:首相官邸HP知的財産戦略本部・AI時代の知的財産権検討会
「中間とりまとめ」-権利者のための手引き-P26
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/2411_tebiki.pdf)
まず、「AI時代の知的財産権検討会」とは、内閣府の知的財産戦略本部に設置された生成AIの懸念やリスク等への対応を検討する検討会です。昨年の10月4日から7回に亘って開催されて、今年5月には「中間とりまとめ」を公表しています。
今回の「中間とりまとめ-権利者のための手引き-」は、著作権者等の権利者として、生成AIに対してどのような対策をしておくべきか等が、あらゆる分野で纏められています。興味がある方は、上のリンク先資料を、一読されても良いと思います。
ただ、現時点の政府の考え方が纏められた資料であるため、何らかの法的拘束力が生じるものではない点について注意が必要です。
もっとも、これから中間とりまとめに従って関連法規が改正される可能性はあります。
今回の手引きには、大事な論点である「生成AIが生み出した著作物が既存の著作物を侵害するか」についても記載があり、「依拠性」について、P26に「既存の著作物が学習データに含まれていることが立証できる場合、生成AIの開発・学習段階で当該既存の著作物が学習されていた場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも、通常、依拠性があったと推認されます。」と記載されています。すなわち、AI利用者が既存著作物を認識していなかったとしても依拠性が「推認」されるとしているのです。
これまで著作権侵害訴訟の際には、権利者が「類似性」と「依拠性」を立証する必要がありましたが、生成AIの著作物については、「依拠性」を事実上、立証する必要がない、としているのです。この内容は、来年以降の著作権法の法改正に折り込まれる可能性があります。
こうした法改正が行われると、権利者は裁判が起こしやすくなるので、将来、生成AIで生み出された著作物について訴訟が多く提起されるかもしれません。