意匠法でも、メタバース上の「物品」に権利行使ができる法改正を予定
今回は、特許庁が発行したガイドブックについて紹介します。
内閣府の知的財産戦略本部は6月3日に「知的財産推進計画2025」を発表しました。この中で、意匠法について、メタバース上の「物品」に対して権利行使ができるように法改正を行なう、との方針が示されました。

出典:経産省HP「不正競争防止法の改正に伴う逐条解説等の改訂方針(案)について」 (https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiteki_zaisan/fusei_kyoso/pdf/023_05_00.pdf
まず、現在、メタバース上の被服等のアイテム(物品)に対する権利行使は、不正競法防止2条1項3号の「商品形態模倣行為」で、販売時から3年間に限り行うことができます。もっとも、この権利行使も、令和5年の法改正で新たに認められるようになったばかりです。
上の図は、その改正の際に使われた図で、リアルの真正品だけでなくデジタルの真正品からも、それぞれの模倣品に対して、権利行使ができるように法改正がなされました。
今回は、こうした権利行使について、意匠権でもできるように法改正を目指す、とのことです。
もっとも、この法改正ですが「物品」の定義を変えるのか否かも含めて、少し大変な気がします。それは、意匠法の「物品」とは「有体物のうち市場で流通する動産」をいいますが、メタバース上のアイテムは、この「物品」には含まれないためです。
なお、令和2年の法改正で「建築物」を保護対象にした時には、物品とは別に「建築物」を条文に明示して対応しました。今回のメタバース上のアイテムをどのように定義するのか興味があります。
また、権利が及ぶ範囲にも興味があります。メタバース上のアイテムが海外サーバーで処理される場合にどうなるのか? 特許法で、現在、議論となっている「属地主義」の問題が意匠法でも同じように発生します。
これから、意匠法の法改正の動向を確認しておく必要があると思います。
▶不正競争防止法の改正に伴う逐条解説等の改訂方針(案)について
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https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiteki_zaisan/fusei_kyoso/pdf/023_05_00.pdf