地域団体商標「なみえ焼そば」(商標登録5934383)を巡る問題
先月、マスコミが報道したことで、ご存じの方も多いと思いますが、今回の知財ニュースは、地域団体商標で登録されている「なみえ焼そば」を巡る問題を取り上げます。

出典:特許庁HP https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/shoukai/ichiran/5934383.html
今回、マスコミが報道した内容は、以下のとおりです。
・福島県浪江町で長年親しまれてきた「なみえ焼そば」の商標権を持つ町商工会が、10月から名称を使う店から、商標権の使用許諾とロイヤルティー徴収を始めた。
・町商工会は2017年3月に商標登録したが、今年5月になって町内外の事業者に対し、3000円の登録料とロイヤルティーとして売り上げの2.5%を徴収すると通知。
・原発事故直後から避難先の二本松市で営業する「杉乃家」は徴収には応じず、今月から名称を「杉乃家の焼そば」に変更した。店主は「震災前から営業を続けているのはうちだけなのに、……今回は文書を一方的に送りつけられて残念だ」と語った。
この報道に対して、X(旧Twitter)等のSNSでは、町商工会側を批判的に語る方が多く、いわゆる「炎上状態」となっています。
もっとも、この商標は、日本弁理士会が震災復興支援の一環で権利化をサポートした商標で(https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201503/jpaapatent201503_001-008.pdf)、権利化した時の目的が、疲弊した地域ブランドの復興・維持という崇高なものであったことを考えると、現在の状況は、事業者、町商工会、そして日本弁理士会にとっても、かなり残念な結果だと思います。
私自身がこの支援活動に携わったわけではないので、何か言える立場ではありませんが、このような場合は、商標権の「活用の仕方」を画一的にするのではなく、柔軟にすれば良いと思います。
例えば、杉乃家さんのように長年ブランド維持をされた方には『レジェンド伝承会員』として、ロイヤルティーを0にして、代わりに「なみえ焼そば」の技術や味の伝承をしてもらう等、いろんな活用の仕方があると思います。
「刃物」も使い方次第で、人の役に立ったり、人を傷つけたりすることがあります。知的財産権も「活用の仕方」が大事だと思います。
