3倍巻きトイレットペーパーの特許訴訟、日本製紙クレシアが大王製紙に敗訴

 今回の知財ニュースは、8月21日に東京地裁で、日本製紙クレシアVS大王製紙の「3倍巻きトイレットペーパー」に関する特許訴訟の判決が下されたので、この事件について紹介します。

    王子製紙(株)商品(被告商品)           日本製紙クレシア(株)商品(原告商品)
 出典:日本経済新聞HP(2024年8月21日掲載)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE202OS0Q4A820C2000000/

 近年、芯の交換頻度が減ることや収納スペースが節約できることから、長巻トイレットペーパーの人気が上昇しており、現在、市場の約3割を占めるようになっているようです。日本製紙クレシアは2012年から「3倍巻き」の開発を進め、50件以上の関連特許を取得しているそうです。

 今回の事件では、2022年に大王製紙が販売を開始した「エリエール i:na(イーナ)トイレットティシュー3.2 倍巻4ロール」等の3製品に対して、日本製紙クレシアが保有する特許権3件(第6735251号「トイレットロール」、第6590596号「ロール製品パッケージ」、第6186483号「トイレットロール」)を侵害するとして、訴訟が提起されました(令和4年(ワ)第22517号 特許権侵害差止等請求事件)。

 判決内容を確認すると、日本製紙クレシアの特許は、全て数値限定特許(数値範囲を特定して権利化された特許)でしたが、大王製紙の製品は、その数値範囲内にない、形状の構成が異なる、とのことで、権利侵害しないと判断されて大王製紙が勝訴しました。


 今回、気になったのは、日本製紙クレシアの特許が全て「数値限定特許」であることです。化学物質等の発明であれば数値限定特許は良くありますが、トイレットロールやパッケージといった構造物の発明で、数値限定特許というのはほとんどありません。これは、数値を限定すると権利範囲が狭くなり、また、その数値に特有の効果がなければ進歩性が否定されやすい、という理由のためです。

 今回の特許の経過書類等を確認してませんし、また、私自身トイレットペーパーの技術分野について詳しいわけではないので、断言はできませんが、権利範囲についてもし「数値限定」を行わず権利化していた場合は、もしかしたら、日本製紙クレシアが勝っていたかもしれないな、と思いました。

 なお、日本製紙クレシアは、この事件を知財高裁に控訴する予定とのことです。

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