電動アシスト自転車と知的財産権

今回の知財ニュースは、最近よく街中で見かけるようになった電動アシスト自転車に関する2つの知財ニュースについて、ご紹介します。


出典:NHKホームページ https://www.nhk.jp/p/ts/P1124VMJ6R/list/


 1つ目は、先月のNHKの番組「新プロジェクトX」で、電動アシスト自転車の開発秘話が取り上げられていたのですが、その中で開発したヤマハ発動機が取得した特許権をオープン(権利行使せず)にしていたということです。私は、このことを恥ずかしながら知りませんでした。
 ヤマハ発動機は「高齢者や主婦など交通弱者にできるだけ多く使ってもらいたい」という意図から、特許権をオープンにしたそうです。実際に、電動アシスト自転車がこれだけ普及していることを考えると、この決断が大きかったのだと思います。

 一方、こうした普及により最近は様々な弊害が出ています。その1つが、バイクのようにスピードが出る危険な電動アシスト自転車の存在です。
 この問題に関して、先月、2つの目の知財ニュースがありました。
 それは、大阪府警が、電動アシスト自転車の改造自転車や改造部品を販売していた者を、「商標権」違反で逮捕・書類送検したというニュースです。

 多くの人は「なんで商標権?」と思うかもしれませんが、過去にNintendo事件(東京地裁平成4年5月27日判決)で、商標権者が販売した商品に「改変」を加えて再販売した者を、登録商標の出所表示機能や品質保証機能を害したとして、商標権侵害と判断した裁判例があり、大阪府警はこの裁判例に沿って逮捕等したのだと思います。
 ただ、個人的には、Nintendo事件が民事事件であるのに対し、今回は刑事事件であったため、人権保護の観点から逮捕・書類送検まで行うことが、果たして正しかったのか疑問が残ります。

 なお、今月から改正道路交通法が施行され、ペダル付き原付き自転車「モペット」(24km/h以上でアシスト可のもの)が「バイク」に分類させることが明確になったため、これからこのような事案は、道路交通法で処理されるのではないかと思います。

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