ゲーム「パルワールド」のポケットペアを、任天堂・ポケモンが特許権侵害で提訴
今回の知財ニュースは、今年1月に発表され2024年に最もヒットしたゲームと言われている「パルワールド」を開発・運営するポケットペア社を、ゲーム「ポケットモンスター」を開発・販売している任天堂社とポケモン社が、特許権を侵害しているとして訴訟を提起した事件についてです。
どの特許権を侵害しているか、現時点では明らかにされていませんが、私は、任天堂とポケモンが共有している以下の特許権ではないかと思います。
特許第7545191号「ゲームプログラム、ゲームシステム、ゲーム装置、およびゲーム処理方法」
それは、この特許権の審査経過が、かなり特殊だからです。この特許権の特許出願は、もともと2021年12月22日に出願された親出願から3回分割された曾孫出願で、2024年7月30日に「スーパー早期審査」の手続を使って出願されました。8月15日に明確性違反の拒絶理由を受けたものの、8月19日に電話面談すると共に補正書が提出され、8月22日には特許査定が下され、同日に登録料を納付されて、8月27日に登録されました。すなわち、この特許権は、出願して一ヶ月も経たずに登録されているのです。お盆休みもあった8月に、この特許権の権利化はかなり早いです。
「パルワールド」については、発表直後から「ポケットモンスター」のキャラクターとよく似ていると話題となり、ゲーム業界では、ポケモン(任天堂側)がポケットペアを「著作権」侵害で訴えるのではないかと言われていました。
しかし、今回、任天堂とポケモンは、「特許権」を使ってポケットペアを訴えました。これは、特許権が絶対的権利であり、誰に対しても権利侵害を主張でき、権利範囲も明確であるのに対して、著作権が相対的権利であり、相手方の「依拠性」を主張した上で、対象(著作物)の「類似性」も主張しないといけないという、訴訟追行の不安定さを考慮してのことだと思います。
こうしたことから、今回の訴訟では任天堂とポケモンがかなり準備をした上で、訴訟を行っていることが分かります。最終的にこの訴訟がどのような結論になるのか分かりませんが、私は、任天堂とポケモンが、確実に「パルワールド」を市場から排除したい、と思っているように感じます。