現在、知財高裁で行われている「第三者意見募集制度」について
今回の知財ニュースは、現在、知財高裁HPで行われている第三者意見募集制度について紹介します。
出典:BUSINESS LAWYERS https://www.businesslawyers.jp/practices/1375
知財高裁は現在(~9/6)、HPで「血液豊胸手術に用いる薬剤(皮下組織増加促進用組成物)に関する特許(特許第5186050号)の侵害訴訟」について、第三者意見募集を実施しています(https://www.ip.courts.go.jp/tetuduki/daisanshaiken/index.html)。
この第三者意見募集制度とは、令和3年の特許法改正で導入された証拠収集手続きで、特許法第105条の2の11に定められています。この制度は民事訴訟の原則である「弁論主義(裁判の基礎となる訴訟資料の提出を当事者の権能かつ責任とすること)」の例外です。すなわち、判決の効力が及ぶのは「当事者」であるため、「当事者」以外の第三者や裁判所が証拠等の訴訟資料を提出することは認められない、とするのが民事訴訟の原則(弁論主義)ですが、特許訴訟等では、事実上の効力が第三者に及ぶ可能性があるため、例外的に第三者意見募集制度が設けられたのです。但し、特許法に定められた今回の制度は、第三者意見について当事者が最終的に訴訟に提出するかを決める権限を有しているため、弁論主義の枠内で、第三者意見を取り込むようにしているのがポイントです。
過去には、制度成立前に、アップル対サムスン訴訟でFRAND宣言がされた特許についての意見募集があり、また、制度成立後には、ドワンゴ対FC2訴訟で海外サーバのデータ生成についての意見募集がありました。
今回の事件の主な論点は「医師が豊胸手術に用いる薬剤を、豊胸手術の前段階で製造する行為につき、特許権の効力が及ぶのか。」です。すなわち、特許法第29条1項柱書の「産業上利用できる発明」の「医療行為の射程」についての論点です。
個人的には、権利者が、本件特許の中間対応時に「侵害対象の薬剤を患者に注入する行為」に係る請求項を、医療行為であると認識し、削除していることから、今回の医師に対する権利行使は、「包袋禁反言」などから認められないのではないかと思います。
皆さんも興味があれば、是非、上のリンクから内容を検討して頂き、知財高裁に意見を述べられたら良いと思います。