特許出願非公開制度について
今回の知財ニュースは、経済安全保障推進法に基づき、5月1日から運用が開始される「特許出願非公開制度」についてです。
出典:特許庁HP(https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/index.html)
この制度は、公にすることにより国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明(戦争等で使用することが考えられる最先端技術)について、国が「保全指定」をして非公開等にすることにより、海外の敵国等にその発明が盗用されないようにする制度です。
上図が特許出願非公開制度のフロー図です。ポイントは、特許庁で「第一次審査」を行い、そこで「特定技術分野」に該当すると、内閣府の審査部門でさらに機微性の検討と産業への影響等の検討を行い、出願人の意思確認をした上で「保全指定」を行う、という二段階の審査を行う点です。
その発明が「保全指定」されると、出願人は補償金が貰えるものの、実施も公開も外国出願も原則的に行うことができないという制限を受けます。また、その期間は特許権も得ることができないため、他者に対して牽制力も与えることができません。
こうしたデメリットを、素直に受け入れる出願人がいるのでしょうか、甚だ疑問です。もちろん、補償金の額によっては受け入れる出願人もいるでしょう。しかし、こうした「保全指定」のデメリットがあるのであれば、出願をせず、ノウハウ化する、又は発明を公知にしてしまう出願人が多いように思います。
個人的には、この制度の開始後の運用実績が気になります。
なお「特定技術分野」については、以下のサイトで確認することができます。
https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/doc/tokutei_gijutsu_bunya.pdf